セッション情報 | 研修医発表(卒後2年迄) |
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タイトル | 研48:腹腔-静脈シャント術により難治性腹水をコントロール後、治療を継続し得た肝細胞癌の一例 |
演者 | 後藤 由佳(公立八女総合病院消化器内科) |
共同演者 | 永松 洋明(公立八女総合病院消化器内科), 森田 俊(公立八女総合病院消化器内科), 城野 智毅(公立八女総合病院消化器内科), 小野 典之(公立八女総合病院消化器内科), 鳥村 拓司(久留米大学消化器内科), 佐田 通夫(久留米大学消化器内科) |
抄録 | 【はじめに】肝細胞癌(HCC)は、難治性腹水が存在すると治療が困難となる。今回、難治性腹水に対して腹腔-静脈シャント術(デンバーシャント)後、TACEを施行し得たHCCの一例を経験したので報告する。【症例】89歳、女性。2004年7月に肝S5に長径22mm大のHCCを認めRFAを施行。2007年10月のCTにてS5のRFA部局所再発と、肝S2に径15mm、12mmを認め、それぞれに対しTACEを施行した。2010年1月、S5に径15mmの再発を認めていたが、腹水貯留もあり治療せず経過観察していた。2011年1月、腹水は難治性となり、利尿剤投与、アルブミン製剤投与でもコントロール不良となった。HCCは肝S7に径20mm、S3に径15mmのHCCみられたが、週に1回腹水穿刺が必要な状態にあり無治療とした。腎機能は悪化し、血清クレアチニンは、2011年3月1.25mg/dLと上昇した。腹水は漏出性でありプロトロンビン時間51%、総ビリルビン1.0mg/dL、ほか肝機能は保たれていたため2011年4月デンバーシャントを留置した。一時肺うっ血が認められたが利尿剤にて改善した。2011年7月の造影CTにて、肝S3のHCCは径25mmと増大、S7にも径25mmの再発がみられた。この時点で腹水はコントロールされた状態にあり、肝予備能もChild-Pugh Grade C(score10)からChild-Pugh Grade B(score7)まで改善していた。HCCに対する治療可能な状態にあり、2011年8月、肝S3、S7に対して選択的TACEを施行した。腹部CTでHCC部にリピオドール集積良好、腹水悪化もなく肝機能も保たれており退院となった。その後も肝機能は維持されており、多発肝細胞癌に対して2012年11月、2013年7月にTACEをおこない、デンバーシャント留置後2年4か月経過生存中である。【まとめ】HCC症例において、難治性腹水が存在すると治療が困難となり予後不良となる。今回、難治性腹水に対しデンバーシャント術施行により腹水をコントロールし、肝予備能も改善したためHCCに対する治療を行うことができた症例を経験した。条件がよければ難治性腹水に対してデンバーシャントはPSだけではなく、肝機能も改善させる可能性があり有効と考えられた。 |
索引用語 | 難治性腹水, デンバーシャント |