セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研55:

既往感染からのHBV再活性化を併発したため診断に苦慮した、同種末梢血幹細胞移植後の慢性肝GVHDの一例

演者 吉藤 正泰(北九州市立医療センター内科)
共同演者 河野 聡(北九州市立医療センター内科), 小野原 伸也(北九州市立医療センター内科), 重松 宏尚(北九州市立医療センター内科), 三木 幸一郎(北九州市立医療センター内科), 丸山 俊博(北九州市立医療センター内科), 下田 慎治(九州大学病態修復内科)
抄録 【症例】66歳女性。2005年5月(58歳時)に眼原発の中枢神経系リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL))を発症。抗癌剤投与および全脳放射線照射により寛解が得られた。しかし、2012年5月に全身リンパ節腫脹よりDLBCLの再発と診断され、R-THP-COP療法を4Kur施行した後、2012年9月にHLA完全一致の同胞より同種末梢血幹細胞移植を行った。移植前の血液検査では、HBs抗原陰性、HBc抗体陽性、HBs抗体陽性、HBVDNA陰性、HCV抗体陰性であった。2013年5月末に全身倦怠感にて当院受診。T.Bil 0.4mg/dl, ALT 205 IU/l, ALP 982 IU/l, γGTP751 IU/lと肝障害を認め、かつHBV DNA 3.3logcopy/mlでありde novo B型肝炎と判断して翌週よりEntecavir投与を開始した。HBVDNAは2週間で速やかに陰性化したが、肝障害は増悪し、Entecavir開始3週間後にはTBil 5.4mg/dl, ALT 104 IU/l, ALP 2294 IU/l, γGTP 2212 IU/lとなった。Entecavir開始2週後の肝生検にて、小葉間胆管を中心にリンパ球浸潤を認めたため慢性GVHDと診断。経口ステロイド投与(10mg/day)を開始した。以後、肝障害は改善傾向を示し、ステロイド投与開始後4週間でT-Bil 0.7mg/dl、ALT 23IU/l、ALP 573IU/lとなった。【考察】本症例では、HBVDNAの再活性化を伴う肝障害を認めたためde novo B型肝炎と診断し核酸アナログ投与を開始したが、結果的に慢性肝GVHDの診断が遅れることとなった。HBVDNA量が肝障害をきたすほど増えておらず、また肝逸脱酵素に比し胆道系酵素の上昇が著しいことから、肝障害の原因として、HBV以外の関与も診断当初より考慮するべきであった。造血幹細胞移植後の肝障害の診療を行ううえで、貴重な症例であるため報告する。
索引用語 HBV再活性化, 肝GVHD