セッション情報 ワークショップ4「炎症性腸疾患 最近の治療」

タイトル WS4-15:

クローン病肛門病変に対する抗TNF-α抗体投与の長期成績

演者 佛坂 正幸(潤和会記念病院外科)
共同演者 池田 拓人(宮崎大学腫瘍機能制御外科), 内山 周一郎(都城市郡医師会病院外科), 岩村 威志(潤和会記念病院外科), 千々岩 一男(宮崎大学腫瘍機能制御外科)
抄録 【目的】クローン病肛門病変に対する抗TNF-α抗体治療の長期成績について検討した.【方法】活動性の痔瘻・肛門周囲膿瘍をもつクローン病のうち,2年以上抗 TNF-α抗体による治療を行った25例(男性:19例,女性:6例,初回手術時年齢:32.6±13.6歳(平均±標準偏差))について検討した.肛門病変はIILC:12例,IIH(+IIL):7例,III:4例,IV:2例であり,肛門病変に対する治療はseton 挿入(初回挿入本数:3.9±1.3本).ドレナージのみ:1例であった.経過中に腸管病変のため1例で人工肛門を造設した.1例はseton挿入後,痔瘻が完治した後にinfliximabを開始した.現在までinfliximab初回投与より75.1±28.6ヵ月が経過し,投与回数は35.8±12.7回である.活動性の判定はseton の有無に関わらず排膿のないものを治癒,排膿があるものを活動性(排膿が減少:軽快,排膿が増加:悪化)とした.【成績】治癒後にinfliximabを投与した1例を除く24例のうち,初回投与の効果は治癒:9例,軽快:9例,悪化:6例であり,悪化例ではseton を追加挿入した.継続投与中,21例は一旦治癒(infliximab開始から18.7±11.6ヵ月,投与回数:8.9±9.2回)した.一旦治癒した21例のうち9例は治癒から21.9±15.3ヵ月後に活動性となったが,12例は治癒のまま経過している.4例は軽快したものの治癒することなく,うち1例は悪化し,直腸切断術を行った.2例(効果減弱:1例,infusion reaction:1例)でadalimumab に変更している.治癒した13例中2例では肛門狭窄をきたし,肛門拡張術を行った.【結論】クローン病に合併した痔瘻・肛門周囲膿瘍はseton 法によるドレナージ後に,抗TNF-α抗体を継続投与することで,治癒が期待できるものの,長期経過中には再発する症例も少なくない.また,肛門狭窄にも留意するべきである.
索引用語 クローン病, 抗TNF-抗体