セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専69:

多発肝転移を伴う膵神経内分泌腫瘍と結節性硬化症に合併した腎血管筋脂肪腫に対してエベロリムスが奏効した1例

演者 日野 直之(大分県立病院消化器内科)
共同演者 和田 蔵人(大分県立病院消化器内科), 阿南 香那子(大分県立病院消化器内科), 秋山 祖久(大分県立病院消化器内科), 高木 崇(大分県立病院消化器内科), 西村 大介(大分県立病院消化器内科), 加藤 有史(大分県立病院消化器内科)
抄録 症例は36歳男性。3歳で結節性硬化症を指摘された。平成24年8月近医で施行された血液検査で肝障害を指摘され、11月腹部単純CTで肝内多発腫瘤・膵頭部腫瘤・両腎腫瘤を認め、当科紹介され入院となった。血液検査ではCEA 10.0ng/ml・PIVKA-2 56mAU/mlと腫瘍マーカーが上昇し、肝障害も認めた。腹部造影CTでは肝両葉にびまん性に多発する最大40mm大の造影不良な低吸収腫瘤を認め、膵頭部にも24mm大の造影不良な腫瘤を認めた。また右腎下極に43mm大、左腎には30mm大の早期より造影され、脂肪濃度の混在する腫瘤性病変を認め、腎血管筋脂肪腫と診断した。腹部MRIでは肝内多発腫瘤と膵頭部腫瘤はT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を示し、多発肝腫瘍と膵腫瘍は同様の信号強度を示し膵腫瘍からの肝転移が疑われた。肝腫瘍生検を施行し、病理所見として異型細胞が増殖し、免疫染色ではGlypican 3が陰性でSynaptophysinが陽性であった。神経内分泌系の細胞が推察され、Ki-67指数は15.4%であった。これらの検査所見から膵神経内分泌腫瘍(NET)G2からの転移性肝腫瘍と診断した。追加で施行した血液検査では、内分泌検査は全て陰性であり、NSEが1550ng/mlと上昇していた。ホルモン過剰症状もなく、非機能性腫瘍と判断した。エベロリムス10mgの経口投与を開始し、腫瘍マーカーはNSEが1550ng/mlから20ng/ml台まで低下し、CEAも正常範囲に低下した。また投与1ヶ月で肝障害も正常化した。投与3ヶ月で施行した腹部造影CTでは、膵腫瘍・転移性肝腫瘍・両腎の血管筋脂肪腫は全て縮小していた。投与1ヶ月頃よりGrade2の口内炎と頭部ざ瘡を認めたが、ステロイド軟膏投与により改善した。その他特記すべき副作用はなく、外来でエベロリムスを投与中である。膵NETと結節性硬化症による腎血管筋脂肪腫を合併した症例は非常に稀で、いずれの腫瘍性病変に対してもエベロリムスが奏功した貴重な症例であり、文献的考察を加え報告する。
索引用語 膵神経内分泌腫瘍, 腎血管筋脂肪腫