セッション情報 一般演題

タイトル 124:

保存的に治療しえた外傷性膵損傷の1例

演者 甲 拡子(長崎大学病院 移植・消化器外科)
共同演者 北里 周(長崎大学病院 移植・消化器外科), 曽山 明彦(長崎大学病院 移植・消化器外科), 前川 恭一郎(長崎大学病院 移植・消化器外科), 釘山 統太(長崎大学病院 移植・消化器外科), 米田 晃(長崎大学病院 移植・消化器外科), 虎島 泰洋(長崎大学病院 移植・消化器外科), 足立 智彦(長崎大学病院 移植・消化器外科), 日高 匡章(長崎大学病院 移植・消化器外科), 藤田 文彦(長崎大学病院 移植・消化器外科), 金高 賢吾(長崎大学病院 移植・消化器外科), 高槻 光寿(長崎大学病院 移植・消化器外科), 黒木 保(長崎大学病院 移植・消化器外科), 江口 晋(長崎大学病院 移植・消化器外科)
抄録 〔はじめに〕外傷性膵損傷は比較的稀であり、診断や手術療法を含め治療方針の決定に苦慮することも少なくない。今回、我々は外傷性膵損傷に対し保存的加療を選択し良好な結果を得た症例を経験したので報告する。〔症例〕48歳男性。受傷機転、受傷時間は不明。飲酒後自宅にて就寝。翌朝、全身の疼痛を自覚し覚醒。近医受診にて、腹部臓器損傷、腹腔内出血疑われドクターヘリにて当院搬送となった。受診時、呼吸循環動態は安定、造影CTにて肝損傷(Ib型)と周囲のfluid collectionを認めたが、明らかなactive bleedingは認めなかった。膵頭部周囲にもfluid collectionおよび膵頭部主体の膵挫傷を認め、緊急ERP施行したが、主膵管損傷は認めなかった(II型)。以上、循環動態、出血はコントロールされており、膵損傷においても主膵管損傷は認めない為、保存的加療とし、ICU管理下に輸液、ガベキサートメシル酸、サンドスタチン、IPMの投与を開始した。加療中、経時的に造影CT施行し、腹腔内出血や膵液瘻の増大、感染徴候の有無について厳重に観察を行い、その結果、34病日目に軽快退院となった。〔考察〕外傷性膵損傷の重傷度分類については2008年の日本外傷学会臓器損傷分類が用いられることが多い。主膵管損傷を伴うIIIb型で手術療法が選択されることが多いが、主膵管損傷の診断自体が難しく、またII型でも裂傷・膵液瘻の程度によりドレナージ術、膵縫合術などを必要とするとの報告もみられる。本症例では、受診時のERPにて主膵管損傷のないことを確認することができ、他の腹腔内臓器損傷も保存的加療可能と判断したことから、厳重な管理の下に保存的加療を行い、良好な結果を得ることができた。〔結語〕外傷性膵損傷の治療に際しては、的確な重症度診断による治療方針の決定と厳重な管理・観察が重要である。
索引用語 外傷性膵損傷, 保存的