セッション情報 一般演題

タイトル 084:

多発肝・肺転移を認めた最大腫瘍径2cm未満の肝類上皮血管内皮腫

演者 山下 信行(新小倉病院肝臓病センター)
共同演者 西浦 三郎(新小倉病院肝臓病センター), 谷本 博徳(新小倉病院肝臓病センター), 山元 英崇(九州大学 形態機能病理学), 野村 秀幸(新小倉病院肝臓病センター)
抄録 類上皮血管内皮腫(EHE)は,終末静脈枝の血管内皮細胞に由来する稀な腫瘍である.今回われわれは,最大腫瘍径が2cm未満でありながら,多発性肺転移を伴った肝EHEの1例を経験したので報告する.症例は30歳代男性.10代に肝障害を指摘されたことがある.2012年7月に腹痛,下痢を主訴に受診した際に,肝腫瘍を指摘された.症状は一過性であり,肝腫瘍とは無関係と考えられた.血液検査では肝胆道系酵素が上昇していたが,HCV・HBVは陰性であった.腹部超音波検査では,肝実質は脂肪肝の像を呈していた.肝S5に径1.3cmで,境界は明瞭,内部がやや高エコーを呈する類円形の低エコー結節を認めた.その他,両葉に径5mm以下の低エコー結節を数個認めた.造影超音波検査では,S5の結節は早期相で周囲実質と共に徐々に染影し,後期相では,全ての結節は明瞭な欠損像として描出された.MRI検査では,肝S5の結節は,T2強調でやや高信号,脂肪抑制T1強調像で辺縁部が高信号,拡散強調像で高信号,肝細胞相で低信号であった.肝腫瘍の鑑別として転移性腫瘍,肝膿瘍,肝細胞癌等が挙げられたが,確定診断に至らず生検を行った.HE染色では,紡錘形の内皮細胞が索状に増殖し,一部に血管腔様の空隙が見られた.免疫染色ではCD34および第VIII因子関連抗原が陽性であり,EHEと診断された.外科治療を予定したが,胸部CTにて周囲にすりガラス影を伴った多数の小結節を肺両葉に認めた.胸腔鏡下で肺生検を行ったところ,EHEの転移と診断された.EHEの悪性度は血管腫と血管肉腫の中間と考えられ,発育は比較的緩徐で長期生存例も見られる.一方で,多発した状態で発見される症例が多く,切除の適応となる症例は少ない.これらの事が示すように,EHEの自然史については不明な点が多い.最近,径1cmほどの単発腫瘍で門脈浸潤が見られた症例が報告されている.我々の症例も最大の腫瘍が径2cm未満でありながら,肝および肺に多発性転移を認めており,EHEが早期より脈管浸潤・血行性転移を来すことを示唆するものと考えられた.
索引用語 肝類上皮血管内皮腫, 肺転移