セッション情報 シンポジウム1「高齢者に対する消化器病診療と今後の展望(消化管、肝胆膵)」

タイトル S1-01:

高齢者における出血性消化性潰瘍の検討

演者 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
共同演者 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 守永 晋(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 井原 勇太郎(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 飯田 三雄(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
抄録 【目的】高齢者における出血性消化性潰瘍の臨床像を明らかにする.【対象および方法】過去4年間に当院で緊急内視鏡を施行した223例の出血性消化性潰瘍の中で75歳以上の高齢者は74例だった.この高齢者群74例と75歳未満の非高齢者群149例の臨床背景、基礎疾患、抗血栓薬およびNSAIDsの服薬、H. Pylori (HP) 感染、血栓塞栓症、潰瘍性状(Forrester分類)、止血処置、輸血率を比較した. 【結果】高齢者群の年齢は平均83(75-94)歳で、非高齢者群は平均64(17-74)歳だった.高齢者群は非高齢者群に比較して男性の比率が低く(35例47% vs. 126例85%)、HP感染率も低かった(11/18例61% vs. 97/112例87%).一方、高齢者群ではNSAIDs(38例51% vs. 42例28%)の服用率が高く、その基礎疾患として整形外科疾患(19例26% vs. 19例13%)の有病率が高かったが、悪性腫瘍や感染症の有病率には差がなかった.また高齢者群では基礎疾患として心疾患(17例23% vs. 11例7%)や脳血管疾患(12例16% vs. 6例4%)の有病率が高く、抗血栓薬(29例39% vs. 19例13%)の服用率も高かった.出血性潰瘍発症1週間以内に9例が血栓塞栓症(脳梗塞6例、心筋梗塞3例)を併発したが、高齢者群では心筋梗塞の合併が多かった.両群間でForrester IIa以上の活動性出血の頻度や(46例62% vs. 109例73%)、クリップ止血術を含む複合処置(14例22% vs. 29例21%)および血管塞栓術による追加止血(9例12% vs. 8例5%)を要した止血困難例に差はなかったが、高齢者群では輸血を要した例が多かった(61例82% vs. 90例60%).【結語】高齢者の出血性消化性潰瘍においては、HP感染率は低くとも心疾患や脳血管疾患さらに整形外科疾患を背景に抗血栓薬やNSAIDsの服用が発症に関与しており、循環動態の安定のために輸血を要する例が多く、血栓塞栓症の発症にも注意が必要である.
索引用語 高齢者, 上部消化管出血