セッション情報 ワークショップ16(消化器病学会・消化器外科学会合同)

消化器癌に対する緩和医療

タイトル W16-基調講演:

消化器癌患者の緩和医療(ケア)

演者 下山 直人(東京医大病院・緩和医療部)
共同演者 松崎 靖司(東京医大茨城医療センター)
抄録 消化器癌患者は、痛みをはじめとして、消化管閉塞による嘔気・嘔吐、腹水などによる腹部膨満感などの身体的苦痛、うつや不安などの精神的な苦痛、社会的苦痛に加え、スピリチュアルな苦痛を持っていることが多い。緩和医療(ケア)は、それらに対する全人的な苦痛緩和を目的とした医療である。本ワークショップにおいては、消化器癌の痛みをはじめとした苦痛症状の病態生理、その対応について述べる。がん患者の痛みに対しては、1986年にWHOがん疼痛治療指針が発表されてから、強オピオイドを中心としたWHO方式ががんの鎮痛法のスタンダードになっている。がんの痛みは、がんが発生、転移した場所によってその強さ、性状も異なっており、がんの種類、病期によっても、全身状態、経口摂取の不可などの状況は異なることを理解して、対応すべきである。特に消化器癌の場合、消化管の閉塞などにより、鎮痛薬投与の基本である経口投与が困難となることも多い。従って、痛みのマネジメントにあたっては、患者の全身状態を評価し、その時に最も適切な投与経路(by the appropriate route)によって対応すべきである。鎮痛法の基本である強オピオイドは、決して終末期の患者だけに使用する鎮痛薬ではなく、がんの初期の段階であっても強い痛みに対しては積極的に使用することが推奨されている。また、身体的苦痛、精神的苦痛に対する緩和ケアチーム(緩和ケア医、精神科医、看護師、薬剤師、そのほか)による対応は、非常に重要な役割を果たしており、それらに基づく早期からの緩和医療が、患者の不安、抑うつを有意に改善し、余命を有意に延長させたとする報告も注目されている。
索引用語 WHO方式, オピオイド