セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研16:

潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌の1例

演者 樋口 梢(九州大学病態機能内科学)
共同演者 長畑 誠修(九州大学病態機能内科学), 森山 智彦(九州大学病態機能内科学), 江崎 幹宏(九州大学病態機能内科学), 松本 主之(九州大学病態機能内科学), 北園 孝成(九州大学病態機能内科学), 植木 隆(九州大学臨床腫瘍外科), 真鍋 達也(九州大学臨床腫瘍外科), 一瀬 理沙(九州大学形態機能病理学), 熊谷 好晃(九州大学形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大学形態機能病理学)
抄録 症例は33歳、女性。17歳時に全大腸炎型潰瘍性大腸炎と診断され、ステロイドとメサラジン製剤で加療されていたが、寛解増悪を繰り返していた。2011年よりアサコール2400mg/日の内服を開始され、臨床的に寛解を維持しており、同年に他院で施行された大腸内視鏡検査でも寛解状態であった。2013年3月より血便、右下腹部痛、貧血が出現し、下部消化管内視鏡検査で下行結腸に潰瘍形成を伴う腫瘤を認め、生検で高分化腺癌と診断されたため、当院紹介入院となった。当院での下部消化管内視鏡検査で、下行結腸にほぼ全周性の周堤隆起を伴う潰瘍性病変を認め、スコープは口側へ通過不可能であった。同病変の背景粘膜およびS状結腸~直腸は血管透見を認め、潰瘍性大腸炎は寛解状態であった。逆行性注腸造影検査では同病変の口側に腫瘍は指摘できず、びらんや潰瘍形成も認めなかった。腹部造影CTでは腫瘍の漿膜外浸潤と、同病変周囲のリンパ節腫大を認めたが、遠隔転移はなかった。当院外科にて腹腔鏡下大腸全摘術を施行され、病理診断で病変は高~中分化腺癌で深達度SE。主病変の周囲にはdysplasiaを認めなかったが、癌部から約12cm口側にhigh grade dysplasiaを認めた。術後経過良好であり、現在は外来にて化学療法を行っている。潰瘍性大腸炎患者は健常人に比べて癌の発生率が高く、発症から8年後からは年1回のサーベイランス大腸内視鏡検査が推奨されている。本症例は、1年半の間隔で急速に発育した潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌と考えられ、サーベイランスの重要性と困難性を再認識した症例であった。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 大腸癌