セッション情報 一般演題

タイトル 038:

腹腔鏡下幽門側胃切除Roux-en-Y再建後の吻合部逆行性腸重積の1例

演者 沢津橋 佑典(産業医科大学 消化器・内分泌外科)
共同演者 又吉 信貴(産業医科大学 消化器・内分泌外科), 柴尾 和徳(産業医科大学 消化器・内分泌外科), 山口 幸二(産業医科大学 消化器・内分泌外科)
抄録  症例は81歳、女性。2012年3月に胃癌 M,type0-IIc,sig adenocarcinoma T1b(SM)N1H0P0CY0M0 stageIBに対して腹腔鏡下幽門側胃切除(D1+),Roux-en-Y再建を行い、その後経過良好で外来フォローを行っていた。2013年7月初旬から腹満感、腹痛を認めることがあったが、自己判断で経過観察されていた。7月8日に夕から嘔吐を6回繰り返し、近医受診され腸重積症疑いで当科紹介受診。受診時に左下腹部に腫瘤を触知し、圧痛は軽度であった。明らかな筋性防御や反跳痛は認めなかった。採血ではWBC 4800/μl,CRP 0.06mg/dl,LDH 302IU/l,ALP375IU/l,CK 123IU/lであった。腹部エコーにて腹部膨隆部に一致して20cm近く腸管内腔に陥入し層状を呈し腸重積を疑う所見。CT検査にて左上腹部の拡張腸管内に同心円状層状構造の腫瘤像を認め、口側腸管は著明に拡張しイレウスの所見を認め、少量の腹水も認めた。またエコーおよびCT所見では先進部の明らかな腫瘍性病変は認めなかった。以上より胃癌術後(Roux-en-Y再建後)のY脚吻合部の腸重積症と診断し、緊急で解除が必要と判断し、腹腔鏡下に整復術を行うこととした。術中所見では腹腔内を観察すると小腸はY脚吻合部にて十二指腸断端側へ逆行性に陥入していた。腹腔鏡下でのHutchinson整復術を試みるも解除困難であり開腹へと移行した。しかし開腹下でも重積の全解除は困難であったため、Y脚吻合部より下まで重積を解除した上で腸切術を行った。切除後は機能的端々吻合で再建した。切除標本を確認したが、先進部に重積の原因となる明らかな病変は認めなかった。術後経過は良好で、術後2日目で飲水開始し、術後3日目より食事再開となり、徐々に食事形態を挙げていき、術後11日目で自宅退院となった。胃切除後の腸重積症は胃切除患者の0.07-2.1%に発症するとされるその中でも、B-II再建後のBraun吻合部の腸重積は多いが、Roux-en-Y再建後のY脚吻合部の腸重積症の報告は少ない。今回われわれは腹腔鏡下幽門側胃切除Roux-en-Y再建後に吻合部の逆行性腸重積症を発症した症例を経験したため、若干の文献的考察を交えて報告する。
索引用語 腸重積, 胃切後