セッション情報 一般演題

タイトル 062:

出血性大腸憩室症に対するバリウム注腸充填法の効果

演者 守永 晋(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科)
共同演者 檜沢 一興(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 工藤 哲司(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 井原 勇太郎(公立学校共済組合九州中央病院消化器内科), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学)
抄録 出血性大腸憩室症に対する高濃度バリウム注腸充填法(Barium Enema Impaction Therapy, BET)の効果を明らかにする.【対象および方法】当科においてBETを施行した出血性大腸憩室症5例の臨床像を検討した.BETは無処置で200%バリウム400-800ccを注腸投与し、憩室存在部に30分以上かけ充満させた後にチューブから自然排出させた.【結果】対象は男性3例、女性2例で、年齢は平均81(72-90)歳であった.3例は脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、心房細動のため各々アスピリン、シロスタゾール、ワルファリンを投与され、2例は腰痛のため間欠的にNSAIDを内服していた.3例は初発だったが2例は憩室出血による入院歴があり、うち1例は血管塞栓術(IVR)の治療歴があった.全例が入院後も再三出血を繰り返していた.4例は大腸内視鏡を施行したが出血部位を特定できず、2例は増大する腹部大動脈瘤や腎不全のためIVRを施行しなかった.BET施行後1ヶ月以内の短期再出血例はなく、BET前に輸血を要した3例(各々10、8、6単位)も追加輸血は不要であった.2例は4ヶ月後と13ヶ月後に再出血のため再入院となったが、輸血を要した例はなかった.BETに伴う腸閉塞や穿孔などの有害事象や治療に支障を来した症例はなかった.【結語】高齢化社会に伴い出血性大腸憩室症による緊急症例が増加している.内視鏡止血の有用性が報告される一方で、実際には止血に苦慮する場合も多い.出血性大腸憩室症に対するBETの報告は少なく、適応基準は確立されていない.今回の検討でもBETの長期効果は不明であるが、短期的には内視鏡止血困難例でも効果が期待でき、特にIVRが施行できない症例では考慮しても良い治療法と思われた.
索引用語 出血性大腸憩室症, バリウム注腸充填法