セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研41:

不明熱の診断に苦慮した生体肝移植後患者の一例

演者 道辻 徹(長崎大学消化器内科)
共同演者 妹尾 健正(長崎大学消化器内科), 原口 雅史(長崎大学消化器内科), 高木 裕子(長崎大学消化器内科), 吉村 映美(長崎大学消化器内科), 加茂 泰広(長崎大学消化器内科), 内田 信二郎(長崎大学消化器内科), 本田 琢也(長崎大学消化器内科), 柴田 英貴(長崎大学消化器内科), 三馬 聡(長崎大学消化器内科), 田浦 直太(長崎大学消化器内科), 市川 辰樹(長崎大学消化器内科), 中尾 一彦(長崎大学消化器内科), 岩本 直樹(長崎大学第一内科)
抄録 症例は67歳女性。2004年、C型の非代償性肝硬変により次女をドナーとした生体肝移植を施行された。術後のHCV再感染に対してペグインターフェロンとリバビリンの併用療法を幾度か試みられるもSVRに至らず外来にて経過観察されていた。2013年3月下旬より微熱が見られるようになり、4月には38度を超す弛張熱となった。発熱の原因精査目的に当科入院となったが、体温39.2度のほか特記すべき身体所見をみとめなかった。血沈は軽度亢進していたが、白血球数やCRPの上昇はみとめなかった。各種膠原病自己抗体陰性で、甲状腺、副腎皮質ホルモン値も正常であった。真菌症や結核、サイトメガロウイルス感染症の血清マーカーも陰性であった。入院中、二度の全身CT検査を施行するも著変みとめず、頭部MRIや髄液検査、Gaシンチグラムでも異常を指摘できなかった。薬剤に関して最近追加・変更されたものも確認できなかった。経過中、38度以上の高熱は持続していたが、関節痛などはなく軽度の頭痛をみとめるのみであった。典型的な症状には乏しかったが、不明熱の鑑別として家族性地中海熱(FMF)の遺伝子検査をおこなった。その結果、典型例であるexon10の変異はなかったが、exon2(E148Q)、exon3(P369S-R408Q)にそれぞれホモ、ヘテロの変異をみとめた。漿膜炎を疑う症状を伴わず発熱の持続期間も非常に長かったが、遺伝子検査の結果からは非定型FMFの可能性もあると考えられた。ガイドラインに従って診断的コルヒチン投与を開始したところ、徐々に解熱傾向となり頭痛も消失したため最終的に非定型FMFによる発熱と診断した。熱型が周期性ではなく、身体所見にもとぼしかったことが本症例で診断の遅れた原因と思われた。肝移植後には発熱をともなう様々な疾患がみられるが、稀な病態として自己炎症症候群も考慮する必要がある。不明熱の診断に至らない場合は典型的な症状がなくとも遺伝子検査まで積極的に行うべきであると考えた。
索引用語 不明熱, 肝移植後