セッション情報 | 一般演題 |
---|---|
タイトル | 067:ステロイドパルス療法直後に発症した単純ヘルペス肝炎を契機に、一過性に血中HBV-DNAの陽性化を認めたHBV既往感染者の1例 |
演者 | 宮川 恒一郎(産業医科大学第3内科学) |
共同演者 | 柴田 道彦(産業医科大学第3内科学), 久米井 伸介(産業医科大学第3内科学), 松橋 亨(産業医科大学第3内科学), 日浦 政明(産業医科大学第3内科学), 阿部 慎太郎(産業医科大学第3内科学), 原田 大(産業医科大学第3内科学) |
抄録 | 症例は55歳、女性。1990年に健康診断で、HBs抗原陽性を指摘されたが、以降は毎年受診していた人間ドックでHBs抗原陰性を確認されていた。201X年にバセドウ病眼症の治療目的にA病院に入院し、HBV既往感染であることを確認し、メチルプレドニゾロン 1000 mg/日によるステロイドパルス療法を第1-3病日、第8-10病日に施行され、退院となった。第18病日より38℃台の発熱と胸腹部の小丘疹が出現し、翌日B病院で施行された血液検査にてAST 68 IU/L、ALT 89 IU/Lと肝機能障害を認めたが、その際のHBV-DNAは検出感度以下であった。第20病日に肝障害の精査加療目的に当科紹介入院となった。当科入院時にはHBV-DNA 2.8 log copies/mLと上昇していたものの、前医でアミノトランスフェラーゼ上昇時のHBV-DNAが検出感度以下であったこと、入院時のウイルス量が低値であったことから、HBVが急性肝障害の原因の可能性は低いと判断し、核酸アナログ製剤の投与は行わず、各種ウイルス肝炎、自己免疫性肝疾患等の検索を行った。ALT値は、第22病日には1335 IU/Lまで上昇したものの、第23病日には1105 IU/Lと低下に転じた。この時点で各種ウイルスマーカーの結果が判明し、単純ヘルペス肝炎と診断した。アシクロビルの投与は肝障害が改善傾向にあったため行わなかった。HBV-DNAはALT値の低下とともに、第23病日には2.1 log copies/mL未満となり、第27病日には検出感度以下となった。肝障害の再増悪を来すことなく良好に経過し、第42病日に退院となり、その後もHBV-DNAの陽性化を認めていない。近年HBV既往感染者に対して化学療法や免疫抑制療法を行った場合にHBVの再活性化、急性肝炎を来すde novo肝炎の存在が広く認識されるようになった。しかし、ステロイド単剤でのHBV再活性化は稀であり、 今回我々はステロイドによるHBV増殖作用が非常に短期間で出現し、さらに他の原因による肝障害によりHBV-DNAが肝細胞より逸脱したと考えられる症例を経験したので報告する。 |
索引用語 | ステロイドパルス, HBV再活性化 |