セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研57:

肝内門脈-大循環シャントによる肝性脳症とその治療成績

演者 松藤 祥平(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科)
共同演者 蒲池 紗央理(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科), 大塚 大河(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科), 辻 千賀(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科), 小平 俊一(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科), 中下 俊哉(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科), 井手 康史(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科), 水田 敏彦(佐賀大学 肝臓・糖尿病・内分泌内科)
抄録 【はじめに】高アンモニア血症による肝性脳症は肝硬変の症状として知られているが、門脈大循環シャントでも同様の病態が惹起される。今回認知症として加療されていた高齢男性にシャント塞栓術を施行し、認知機能の改善が得られた症例を経験したので、過去の治療成績とともに報告する.【症例】73歳男性【主訴】ふらつき、意識障害【現病歴】2011年11月頃から物忘れや辻褄のあわない言動、手指の震えが出現、長谷川式簡易知能スケール26/30点で認知症と診断され内服加療(ドネペジル3mg).2012年11月、ふらつき、自力歩行困難、意識障害を認め当院救急受診.【既往歴】腹部手術や外傷歴なし.【身体所見】意識は混濁.胸腹部に特記所見ないが、羽ばたき振戦あり.【血液検査】NH3 208μg/dlと上昇認めるが、その他肝機能などには異常なし.【入院後経過】頭部CTでは明らかな頭蓋内病変はなく、腹部造影CTにて門脈後区域枝-右肝静脈シャントが認められたため、肝内門脈肝静脈(PV)シャントによる高アンモニア血症、肝性脳症grade Iと診断.後日経静脈的シャント塞栓術を施行した.術後1日目には血中アンモニアは52μg/dlと低下し、羽ばたき振戦や意識障害も消失.その後も特に加療せず経過観察したところ、長谷川式簡易知能スケール30/30点と認知機能の改善を認めた.【考察】肝内PVシャントには腹部外傷や術後など原因が明らかなものと、本例のように原因が特定できないものがあるが、いずれも治療としては経血管的なシャント塞栓術が行われる.当院ではこれまでに6例の肝内PVシャントによる肝性脳症を経験しているが、原因が明らかなものは少ない.全例に経血管的シャント塞栓術を施行し、術前後の血中アンモニア(中央値)は、前173μg/dl、後1日目60μg/dl、後7日目47μg/dlと治療後に著明に減少し(p<0.01)、症状も改善している.本例のように認知症と誤診される可能性もあり、認知障害や意識障害の鑑別疾患として留意する必要がある.
索引用語 PVshunt, 肝性脳症