セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研27:

潰瘍性大腸炎術後の門脈血栓症に対してワルファリン療法が有効であった一例

演者 中村 有里(福岡大学筑紫病院 消化器内科)
共同演者 品川 知洋(福岡大学筑紫病院 消化器内科), 矢野 豊(福岡大学筑紫病院 消化器内科), 蓑田  竜平(福岡大学筑紫病院 消化器内科), 高津  典孝(福岡大学筑紫病院 消化器内科), 平井  郁仁(福岡大学筑紫病院 消化器内科), 松井 敏幸(福岡大学筑紫病院 消化器内科)
抄録 【背景】潰瘍性大腸炎(以下、UC)に合併する血栓症の頻度は1.2%から6.4%との報告がある。今回我々はUCの術後に門脈血栓症を合併しワルファリンカリウムの内服で血栓の消失が得られた一例を経験したので報告する。【症例】70歳代男性 【経過】平成25年1月に血便があり近医にて左側大腸炎型UCと診断。リンデロン坐剤で経過を見られていた。平成25年3月に1日5回以上の血便、腹痛の増悪があり当院紹介受診。直腸S状結腸内視鏡検査で下行結腸から直腸に広範な地図状潰瘍を認め、Seo’sAI 214と中等症の状態でPSL強力静注を50mgから開始した。しかし改善がなく全身状態が増悪したため手術の方針とした。(術前PSL総投与量1220mg)4月10日に大腸亜全摘術、回腸人工肛門造設術を施行した。しかし術後血便があり5月8日(POD24)残存直腸の内視鏡検査を行ったところ深掘れ潰瘍が多発し潰瘍性大腸炎が増悪している状態であった。そのため再度内科転科となった。術後CRP2から4と炎症反応高値が持続していたため5月9日に腹部超音波検査、腹部骨盤造影CTを行ったところ門脈本幹遠位部から肝内門脈末梢に血栓が認められた。臨床症状や血液検査上肝障害は認めなかった。プロテインC,S活性は正常で、ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体は陰性であった。凝固系検査では軽度の異常を認めるのみであった。門脈血栓症と診断し、同日よりヘパリンナトリウムの持続静注と同時にワルファリンカリウムの内服を開始した。発症8日目に行った腹部超音波検査では門脈血栓は消失していた。また残存直腸の炎症に関してはリンデロン坐薬と白血球除去療法を行い粘膜の治癒傾向が得られた。【結語】UCに門脈血栓症を合併した報告は医中誌で検索し得た範囲で9例認め、男性が7例、女性が2例であった。UC活動期の発症が6例、腸管手術後の発症が3例であった。寛解期に発症した報告は認めなかった。小腸壊死から緊急手術が施行された症例も報告されておりUC活動期に肝障害や腹痛、炎症反応の上昇など認めた場合は血栓症合併の可能性も考える必要があると思われた。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 血栓症