セッション情報 一般演題

タイトル 089:

生体肝移植術後早期の消化管出血の危険因子と臨床経過

演者 木村 光一(九州大学大学院 消化器・総合外科)
共同演者 池上 徹(九州大学大学院 消化器・総合外科), 今井 大祐(九州大学大学院 消化器・総合外科), 王 歓林(九州大学大学院 消化器・総合外科), 別城 悠樹(九州大学大学院 消化器・総合外科), 松本 佳大(九州大学大学院 消化器・総合外科), 中川原 英和(九州大学大学院 消化器・総合外科), 吉屋 匠平(九州大学大学院 消化器・総合外科), 井口 友宏(九州大学大学院 消化器・総合外科), 二宮 瑞樹(九州大学大学院 消化器・総合外科), 山下 洋市(九州大学大学院 消化器・総合外科), 吉住 朋晴(九州大学大学院 消化器・総合外科), 川中 博文(九州大学大学院 消化器・総合外科), 調 憲(九州大学大学院 消化器・総合外科), 池田 哲夫(九州大学病院 先端医工学部), 前原 喜彦(九州大学大学院 消化器・総合外科)
抄録 【はじめに】生体肝移植術後の合併症として消化管出血がある。しかし、近年の術後消化管出血についての詳細は明らかでない。【対象】2003年1月から2012年12月までに当科にて施行した297例の生体肝移植症例。【検討項目】術後3ヶ月以内に消化管出血を来した症例について(1)発生頻度および臨床背景、1年間のグラフト生存率(2)危険因子(3)グラフト不全との関係をそれぞれ検討した。【結果】(1)術後3ヶ月以内に消化管出血を発症した症例は19例(6.4%)に認め、発症は術後平均18±12日であった。出血部位は食道(食道静脈瘤1例)、胃十二指腸(門脈圧亢進症性胃症2例、胃十二指腸潰瘍2例)、Roux-en-Y再建部(吻合部出血7例)、小腸出血1例、結腸(結腸潰瘍1例)、出血源不明5例であった。15例は保存的に自然止血したが、4例にはEVL、クリッピング、エタノール局注、開腹止血が必要であった。保存的治療を行った症例のうち6例は止血不可能であった。グラフト生存率を検討したところ、術後消化管出血を呈した症例は1年以内のグラフト生存率の低下を認めた(47.4% vs. 92.8% p<0.001)。(2)術後消化管出血に関連する因子について単変量解析を行った結果、術中出血量>10L(36.8% vs. 10.4%, p=0.004)、Roux-en-Y再建(36.8% vs. 12.3%, p=0.009)、閉腹時門脈圧>20mmHg(38.9% vs. 9.8%,p=0.002)が危険因子であり、術後因子として術後総ビリルビン最大値>20mg/dl(57.9% vs. 8.3%, p<0.001)との関係が認められた。(3)術後消化管出血を呈した症例のうち63.2%が出血を呈した日から前後10日以内に最大総ビリルビン値を示していた。さらに、最大総ビリルビン値が20mg/dlを超える有意に死亡率が上昇していた(69.2% vs. 16.7%, p=0.03)。【まとめ】生体肝移植術後の早期消化管出血は、グラフト不全に関わる重要な因子であり、術中出血量、Roux-en-Y再建、閉腹門脈圧20mmHg以上が出血の危険因子であった。グラフト機能の低下によって術後消化管出血を来たしやすい傾向にあり、最大総ビリルビン値が20mg/dlを超える症例は高い死亡率を呈すると考えた。
索引用語 生体肝移植, 消化管出血