セッション情報 ワークショップ3「進行肝細胞癌診療の現状と問題点」

タイトル WS3-05:

当院における高度進行肝癌に対する診療の現状と問題点~門脈内腫瘍栓合併例に対する集学的治療とその成績

演者 玉井 努(鹿児島大学病院 消化器内科)
共同演者 馬渡 誠一(鹿児島大学病院 消化器内科), 大野 香織(鹿児島大学病院 消化器内科), 椨 一晃(鹿児島大学病院 消化器内科), 椨 恵理子(鹿児島大学病院 消化器内科), 今中 大(鹿児島大学病院 消化器内科), 熊谷 公太郎(鹿児島大学病院 消化器内科), 森内 昭博(鹿児島大学大学院 HGF組織修復・再生医療学講座), 宇都 浩文(鹿児島大学病院 消化器内科), 桶谷 眞(鹿児島大学病院 消化器内科), 井戸 章雄(鹿児島大学病院 消化器内科)
抄録 【目的】門脈内腫瘍栓(Vp3-4)を伴った高度進行肝細胞癌(HCC)の予後はきわめて不良であるが、その治療法はいまだ確立されていない。当科ではVp3-4のHCCに対して、肝動注化学療法(HAIC)に加え、肝動注化学塞栓療法(TACE)を中心とした集学的治療を施行してきたので、その治療成績について報告する。【対象および方法】1989年7月から2013年7月まで、当科でHCCの治療を施行した655例のうち、門脈内腫瘍栓を伴った、StageIII、IVA、およびIVBの高度進行HCCの79例(平均年齢:62.5±11.1歳、男性/女性=61/21例、平均観察期間:19.1±34.0カ月)を対象に、治療法別に血液生化学検査、治療効果、累積生存率、生存に寄与する因子を検討した。また近年、門脈内腫瘍栓を伴う高度進行HCCに対して、TACEとSorafenibを組み合わせた治療を行い、CRが得られた症例を経験しており、提示する。【結果】79例の全累積生存(OS)は、中央値(MST)で7ヶ月であった。第1選択治療別のOSは、MSTで手術/TACE/HAIC:26/7.5/2ヶ月で、手術(p<0.05)とTACE(p<0.05)はHAICに比し生存期間の有意な延長を認めた。また第2選択治療別のOSは、MSTでTACE/HAIC/全身化学療法/無治療:15/7/2/2ヶ月であり、TACE選択症例で、生存期間の有意な延長を認めた(p<0.05)。予後に寄与する因子の検討では、性別男性(P=0.004、HR 0.592)、主治療法HAIC(P=0.005、HR0.447)が予後不良因子であった。TACEを第1選択治療とし、その後SorafenibとTACE(平均4.5回)の組み合わせ治療でPR~CRが得られている症例を3例経験している。いずれも門脈内腫瘍栓を有する高度進行HCCである。CR後にPEG-IFN+RBV+TPVの3剤併用を施行しSVRが得られているHCV症例を含めて、3例のMSTは23.3か月であり、経過について供覧したい。【結論】Vp3-4の高度脈管侵襲を有する症例に対しても、TACEは有効な治療法となり得るが、Sorafenibを組み合わせた集学的治療を行うことで、さらなる有効性が期待できる。今後、症例の積み重ねる事により高度脈管侵襲HCCに対する治療法の確立が必要と考えられた。
索引用語 進行肝細胞癌, 集学的治療