セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研38:

腹腔鏡下腹膜生検後に粟粒結核を生じた、結核性腹膜炎の1例

演者 堀 麻美(健康保険諫早総合病院消化器内科)
共同演者 福島 真典(健康保険諫早総合病院消化器内科), 高橋 孝輔(健康保険諫早総合病院消化器内科), 橋本 さつき(健康保険諫早総合病院消化器内科), 田渕 真惟子(健康保険諫早総合病院消化器内科), 植原 亮平(健康保険諫早総合病院消化器内科), 近藤 晃(健康保険諫早総合病院 呼吸器内科), 井上 祐一(健康保険諫早総合病院 呼吸器内科), 福田 明子(健康保険諫早総合病院 外科), 飛永 修一(健康保険諫早総合病院 外科), 山口 広之(健康保険諫早総合病院 外科), 中島 正洋(長崎大学原研病理), 大場 一生(健康保険諫早総合病院消化器内科)
抄録 症例は77歳、女性。2013年5月に食欲不振を主訴に前医受診。6月に腹部CTで腹水貯留と腹膜肥厚、腸間膜の脂肪織濃度上昇と、38度台の発熱を認め6月13日、腹膜炎の診断で前医入院。抗生剤投与にて改善なく、腹水の細菌・抗酸菌培養陰性、結核菌PCR陰性、細胞診class2であり腹膜炎精査目的に6月28日当院紹介転院となった。転院時のCTでは両側胸水の貯留が新たに出現していたものの両肺に異常陰影は認めなかった。悪性腫瘍の検索目的に上・下部内視鏡検査を施行したが有意な所見は認めず。血液検査所見ではQFT陽性、ADA:159IU/mlと高値を示した。腹水中の細胞数は500/μl、リンパ球99%、ADA:102IU/mlであり結核性腹膜炎(TBP)を疑うも抗酸菌培養、及び結核菌PCRは喀痰、胸水、腹水ともに陰性であり確定診断には至らなかった。診断目的に、7月12日腹腔鏡下腹膜生検を全身麻酔下で施行。腹膜・腸管漿膜側には白色小結節が散在しTBPとして矛盾しない所見であった。腹膜組織の結核菌PCR陽性、病理組織学的にも腹膜・大網・腸間膜からの生検で類上皮細胞性肉芽腫が確認できTBPと診断。7月16日よりINH,RFP,EB,PZAにて治療を開始した。しかし術後2日より肺野に陰影が出現し、喀痰結核菌PCR陽性であり粟粒性肺結核を併発。その後、肺野陰影が急速に増悪し、ARDSを合併したが集学的治療を行い改善、抗結核薬にて現在も加療継続中である。TBPの診断目的に腹腔鏡下腹膜生検を施行後、粟粒結核を生じた1例を経験した。手術侵襲による免疫能低下が一因と考えられる。TBPの診断において腹水中の抗酸菌培養・結核菌PCRの感度は低く、陰性であってもTBPを除外することはできない。一方、腹腔鏡下腹膜生検は感度・特異度ともに高く、組織学的な証明も可能であり、診断的に施行する意義は大きい。しかしながら本症例のように手術侵襲により粟粒化をきたし、全身状態が悪化する可能性もあり、TBPを疑えば早い段階での施行を検討する必要があると考える。
索引用語 結核性腹膜炎, 腹膜生検