セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専58:

難治性肝性胸水に対して胸腔鏡下右横隔膜縫合術を施行した1例

演者 齋藤 衆子(国立病院機構大分医療センター)
共同演者 山下 勉(国立病院機構大分医療センター), 木下 慶亮(国立病院機構大分医療センター), 新関 修(国立病院機構大分医療センター), 福地 聡士(国立病院機構大分医療センター), 室 豊吉(国立病院機構大分医療センター)
抄録 【症例】59歳,男性.【主訴】呼吸苦.【現病歴】糖尿病のため当院代謝内科通院していた. 2011年10月腹満感・体重増加のため当科紹介受診.NBNCよる非代償期肝硬変・腹水を認め,精査加療目的に入院.利尿剤で腹水コントロール開始.ある程度改善し,2012年2月に食道静脈瘤に対してEVL施行.その後よりさらに腹水コントロール困難となった.腹腔穿刺・腹水再静注で改善し,同年4月に退院.退院後は外来で加療していたが,同年6月頃より右胸水貯留が目立つようになり,胸腹水コントロール目的に入退院を繰り返した.同年11月,呼吸器外科に相談し胸膜癒着術を計2回施行.胸水は一時減少したが,外来ではすぐに増量.呼吸苦が強く,外来で週1回以上胸腔穿刺を施行するようになった.再度呼吸器外科に相談し,胸腔鏡下手術を検討.2013年2月,精査加療目的に入院.【既往歴】糖尿病,糖尿病性網膜症・眼底出血,高血圧症等.【家族歴】父:高血圧症,兄:B型慢性肝炎.【生活歴】飲酒歴・喫煙歴なし.【身体所見】身長: 163 cm,体重: 77.6kg,BMI:29.2kg/m2.BP:156/82mmHg,PR:88/分,SpO2:94%(R/A),BT:36.2 ℃.呼吸音右肺で聴取されず.腹部:膨隆・軟.肝右肋弓下で4横指触知.【検査所見】Alb 2.8 mg/dl,T-bil 0.33 mg/dl,PT 110%,HBsAg・HBcAb陰性,HCVAb陰性.ANA/AMA陰性.【胸部Xp】右肺に著明に胸水貯留.【CT】右肺に著明に胸水貯留.肝硬変.【RI】Tc-99m Sn-colloidを腹腔内に注入.5分後よりRIの胸腔内移行を認め,以後継時的に移行.【経過】胸腔鏡下右横隔膜切除術施行.胸腔にVATS用ポートを3か所,腹腔に気腹用ポートを1か所設置.内視鏡で胸腔内を観察しながら気腹すると,air leakを認め,横隔膜小孔を2か所確認できた.2個の小孔を含め横隔膜を自動縫合器で一括切除.再度気腹し,縫合部よりair leakのないことを確認し,吸収性組織補強材(ポリグリコール酸(PGA))を被覆して手術終了.術後2週間で退院.術後2か月,Xp 上,胸水貯留はなく,呼吸苦の訴えもなく経過した.【結語】今回我々は,難治性肝性胸水に対して胸腔鏡下横隔膜縫合術を施行し,治療が有効であった症例を経験した.多少の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 肝性胸水, 胸腔鏡下手術