セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専45:

中毒性巨大結腸症を併発した劇症型Clostridium difficile腸炎の一例

演者 和田 将史(別府医療センター 消化器科)
共同演者 杣田 真一(別府医療センター 消化器科), 森田 祐輔(別府医療センター 消化器科), 松尾 享(別府医療センター 消化器科), 鶴田 悟(別府医療センター 消化器科), 良永 雅弘(別府医療センター 消化器科), 酒井 浩徳(別府医療センター 消化器科), 中村 和彦(九州大学大学病院 病態制御内科学), 武藤 庸一(別府医療センター 消化器科)
抄録 【背景】Clostridium difficile colitis(以下CDC)は近年全世界で増加傾向にある。多くのケースでは補液、MTZ・VCM投与などの保存的治療にて軽快することが多いが、発症から急激な経過で集中治療や外科的治療を要し、ショックや多臓器不全を呈す劇症型CDCの存在は十分に周知されていない。今回我々は劇症型CDCによりseptic shock・中毒性巨大結腸症・DICを併発し、集学的治療にも関わらず多臓器不全を呈して死の転機を辿った一例を経験した。【症例】77歳男性、当院で1型糖尿病性ケトアシドーシスに対して加療後、近医総合病院で入院中に発熱と腹痛が出現した。CTRXを投与され、症状は改善傾向となるも、4日後に再度発熱・腹痛が出現した。その際WBC23000/μl、CRP10mg/dlと炎症反応高値、CTにて腸管壁の肥厚、腸管拡張、胸腹水貯留を認め、当科紹介入院となった。入院後から徐々にショック状態となり、ICUに入室後、カテコラミン・ステロイド投与、人工呼吸器管理、エンドトキシン吸着療法などの集学的治療を開始した。病歴よりCDCが疑われたため、CDtoxinを測定したところ陽性であった。また下部消化管内視鏡検査にて直腸に偽膜形成を確認した。著明な腸管拡張を伴い、中毒性巨大結腸症の併発も疑われた。外科的治療は耐術能が不十分であると判断し、保存加療を行う方針とした。ショックの原因としては腸内細菌のbacterial translocationによるseptic shockと推察された。CDCに対しては、MTZ・整腸剤の経鼻胃管からの注入・VCM全身投与を開始するも、反応は不良であり、VCM注腸投与を追加投与した。その後全身状態は改善しつつあったが、第12病日に再度熱発し、ショック・DICの状態となった。その後多臓器不全に至り第21病日に死亡した。劇症型CDCは発症後劇的な転機を辿り、早期の集中治療・外科的介入の至適時期を逸しないことが重要であると考えられた。今回我々は中毒性巨大結腸症を併発し急激な経過を辿った劇症型CDCの一例を経験したため、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 Clostridium difficile colitis, 中毒性巨大結腸症