セッション情報 シンポジウム1「高齢者に対する消化器病診療と今後の展望(消化管、肝胆膵)」

タイトル S1-03:

85歳以上超高齢者の胃・大腸癌に対する治療戦略

演者 中山 剛一(久留米大学医療センター外科)
共同演者 緒方 裕(久留米大学医療センター外科), 三原 勇太郎(久留米大学医療センター外科), 田中 克明(久留米大学医療センター外科), 亀井 英樹(久留米大学医療センター外科), 石橋 生哉(久留米大学医療センター外科), 内田 信治(久留米大学医療センター外科), 白水 和雄(久留米大学外科)
抄録 (はじめに)超高齢者の胃・大腸癌の適切な治療法の確立を目的に、自験例の術後成績を検討した。(対象と方法)2007年1月から2011年12月までに手術を行った85歳以上の初発胃・大腸癌26例を対象とし、術前後の合併症、術式、予後を検討した。(結果)胃癌5例、大腸癌21例で、男性10例であった。年齢は平均87.5歳で最高齢は101歳であった。術式は、胃癌では幽門側胃切除術2例、胃空腸バイパス術1例、胃全摘出術1例、胃全摘出術+膵尾部切除+脾臓摘出術1例、腹腔鏡下胃楔状切除術1例であった。大腸癌では、開腹結腸切除術が7例、腹腔鏡下結腸切除術が13例、ストーマ造設術のみが1例であった。根治手術は21例に施行した。姑息手術5例(重複)の理由は、認知症5例、PS4が3例、穿孔性腹膜炎1例、高度遠隔転移2例、リンパ節遺残2例であった。根治手術・姑息手術施行例ともに周術期死亡は認めなかったが、姑息手術例では1例をのぞき術後1年以内に原癌死した。また術前後のADLにおいては、根治手術を行った1例のみにADL低下を認めたが、そのほかの症例のADLはほぼ不変であった。26例の術後合併症(重複あり)として、せん妄を4例、SSIを2例、術後イレウスを2例、誤嚥性肺炎1例、胆嚢炎を1例、膵液漏を1例に認めたが、腹膜炎の1例を除くと、術前合併症の有無と程度、術式、年齢との明らかな関連は認めなかった。(結語)85歳以上の超高齢者の胃・大腸癌症例では、患者の社会的背景、術前合併症及び癌の進行度を的確に評価し、過不足のない外科治療を選択することが肝要である。しかし、多くの症例が耐術可能であり、幽門側胃切除や結腸切除による根治術が勧められる。また、ストーマ造設術やバイパス術などの姑息手術を行うことで、症状緩和やQOL向上が期待できる。
索引用語 高齢者, 姑息手術