セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研43:

関節リウマチに対するMTX漸減中に発症した自己免疫性肝炎の1例

演者 吉留 彩(製鉄記念八幡病院肝臓内科)
共同演者 黒川 美穂(製鉄記念八幡病院肝臓内科), 大穂 有恒(製鉄記念八幡病院肝臓内科), 山下 尚毅(製鉄記念八幡病院肝臓内科), 梶原 英二(製鉄記念八幡病院肝臓内科), 中野 和久(同 膠原病内科), 園木 一男(同 甲状腺内科), 金城 満(同 病理部)
抄録
【症例】55歳女性。飲酒歴なし。2010年より関節リウマチの診断でMTX開始された。MTX 8mg/wで寛解維持できていたため漸減の方針となった。2012年9月(MTX6mg投与中)より徐々に肝酵素が上昇した。薬剤性肝障害を疑い、内服していたロスバスタチン、MTX(6月時点で4mg投与中)をそれぞれ、2013年5月、6月に中止したが、肝酵素の急速な上昇を認めたため、当科紹介、入院となった。
【検査所見】WBC 5800/ul、Hb 12.5 g/dl、Plt 29.2 万/ul、Alb 4.3g/dl、T-Bil 1.6 mg/dl、D-Bil 0.6 mg/dl、AST 708 IU/l、ALT 1090 IU/l、ALP 732 IU/l、γ.GTP 334 IU/l 、LDH 470IU/l、Fer 654 ng/ml、NH3 32μg/dl、Free T4 2.36 ng/dl、TSH 0.00 μIU/ml、IgG 2049 mg/dl、PT 79.2 %、RF 113.6 IU/ml、MMP-3 100ng/ml、IgG 2049mg/dl、抗核抗体160倍、抗ミトコンドリアM2抗体(-)、抗TPO抗体 362.3IU/ml、抗TG抗体 117.9IU/ml
【経過】各種ウイルスマーカーの測定(HAV,HBV,HCV,HEV,EBV,CMV)にて、いずれのウイルス性肝障害も否定的であった。肝生検ではリンパ球・形質細胞の浸潤を伴う慢性活動性肝炎の像を呈しており、AIHスコアは17点(確診)であった。2013年7月よりPSL55mg(=0.1mg/kg)の内服を開始したところ、肝酵素は速やかな低下を認め、治療への反応は良好であった。PSLを漸減した後に退院となり、維持内服を継続している。甲状線機能亢進症に関しては、慢性甲状腺炎を背景とする無痛性甲状腺炎の診断となり、経過観察にて、その後の沈静化を確認した。
【考察】関節リウマチに対するMTXを漸減する過程で発症し、MTX中止後に急激に悪化した自己免疫性肝炎の1例を経験した。免疫抑制剤であるMTXの減量が免疫刺激となり、自己免疫性肝炎の発症を誘発したものと考えられた。自己免疫性肝炎と関節リウマチの合併は比較的頻度が高いとされているが、同様の経過にて自己免疫性肝炎の発症に至った症例の報告は少なく、貴重と考えられた。文献的考察を加えて報告する。
索引用語 自己免疫性肝炎, MTX