セッション情報 一般演題

タイトル 064:

HIV感染に合併したアメーバ性大腸炎の1例

演者 則松 宏(大牟田市立病院)
共同演者 田宮 芳孝(大牟田市立病院), 垣内 誠也(大牟田市立病院), 森田 拓(大牟田市立病院), 河野 克俊(大牟田市立病院), 大内 彬弘(大牟田市立病院), 豊増 靖(大牟田市立病院), 坂田 研二(大牟田市立病院), 野口 和典(大牟田市立病院), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門), 今村 豊(聖マリア病院血液内科)
抄録 症例は57歳男性。2013年5月に粘血下痢便、肛門部痛、発熱を主訴に受診。腹部CT検査で直腸壁肥厚と周囲脂肪織混濁が認められ、同日入院となった。入院翌日の大腸内視鏡検査ではS状結腸から直腸S状部にびらん、たこいぼ様潰瘍が多発し、上部直腸から下部直腸にかけては全周性に粘膜が脱落し筋層が露出している状態であった。また、直腸潰瘍に連続して肛門周囲膿瘍も認められた。注腸造影後に腹部CTを施行した所、前立腺内に造影剤の漏出を認めたが、骨盤内への漏出なく外科的処置は行わず経過観察となった。生検組織では壊死部質の中にアメーバ原虫の栄養体を認め、アメーバ性大腸炎の診断にて第7病日よりメトロニダゾール2250mg/日の投与を開始し、第17病日よりパロモマイシン1500mg/日を追加で投与した。第22病日の大腸内視鏡検査では全周性の潰瘍は残存していたが、潰瘍底は肉芽組織に覆われており治癒傾向であった。入院中に施行したHIV抗体が陽性で、CD4陽性リンパ球が43/μlと著明に低下しており、第26病日に感染症専門病院へ転院となった。本症例は38度台の発熱、粘膜の脱落所見、消化管穿通を伴う全層性炎症がみられた事より劇症型のアメーバ性大腸炎が疑われた。劇症型の発症頻度は全アメーバ性大腸炎の約3%と稀であるが、消化管穿孔やDICを併発することが多く、死亡率は65-80%と報告されている。劇症化は高齢者やHIV感染、糖尿病、ステロイド投与、悪性腫瘍の合併などの免疫不全状態で危険率が増加すると言われており、このような基礎疾患を有する患者に重篤な腸炎を認めた際には、本疾患を念頭におき早期診断および治療を行う事が重要と考えられた。
索引用語 アメーバ性大腸炎, HIV