抄録 |
【背景】膵癌は未だ予後不良の消化器がんで,高齢者では基礎疾患合併により,検査・治療に苦慮する場合が多い。【対象・方法】2005年1月から2010年10月までに組織学的に腺癌と診断され治療を行った膵癌患者は、304症例(男性:171例,女性:133例,平均年齢:65歳)で,非高齢者65歳未満(N=140)と高齢者65歳以上(N=164)の二群間で,さらには,後期高齢者75歳以上(N=29),超高齢者85歳以上(N=1)を対象として,化学療法の忍容性と治療成績を検討した。後期高齢者においては,内視鏡検査・処置の合併症について併せて検討した。【結果】全症例におけるStageは,4b:196例,4a:79例,3以下:29例であった。治療は,手術例:63例,化学療法:207例,化学放射線療法:12例,その他:22例であった。全症例,65歳以上,65歳未満の生存期間中央値(MST)はそれぞれ276日vs264日vs296日で,標準化学療法のみ施行されたものやstage4bのものに条件を絞っても,65歳以上と65歳未満にMSTの差は見られなかった。後期高齢者,超高齢者についても解析を加えた。次に,診断的・治療的ERCPを実施された後期高齢者20例における合併症は4例(膵炎3例,胆管炎1例,出血0例,穿孔0例)で,いずれも軽度なものが多かった。【考察】化学療法については,高齢者でも基礎疾患に注意すれば,良好な忍容性をもって実施できるものと考えられる。また,65歳以上でBSCのみ行われた症例の中には,比較的長い生存期間のものがあり,全身状態や基礎疾患を加味した上で,BSCのみ行うという選択肢も考慮すべきと考えられる。高齢者であっても,それぞれの特性に応じて検査・治療を選択すれば,リスクを最小限に留めて,非高齢者同様の結果が期待され得る。 |