セッション情報 一般演題

タイトル 032:

クローン病と鑑別を要したエルシニア腸炎の1例

演者 村田 朋哉(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 消化器内科)
共同演者 西山  仁(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 消化器内科), 東  俊太郎(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 消化器内科), 後藤 高介(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 消化器内科), 荻原 久美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 消化器内科), 塩田 純也(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 消化器内科), 黒濱 大和(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床検査科病理), 伊東 正博(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター 臨床検査科病理)
抄録 【症例】17歳女性
【主訴】発熱、下痢、右下腹部痛
【現病歴】2013年3月に発熱、下痢、右下腹部痛が出現した。近医を受診し虫垂炎を疑われCT撮影を行うも虫垂に異常は認めず、盲腸から回腸末端にかけて壁肥厚、周囲脂肪織濃度上昇、リンパ節腫大を認め、精査加療目的に当科紹介受診となった。
【理学所見】体温:36.4℃、血圧:108/62mmHg、脈拍:52/min。腹部は平坦、軟で腸音蠕動音は正常。右下腹部にごく軽度の圧痛を認める。下痢は改善しており、血便は認めない。
【検査所見】WBC:7200/μl、Hb:14.7g/dl、RP:<0.3mg/dl、エルシニアエンテロコリチカ抗体:640倍、便培養:Yersinia enterocolitica(1+)
【経過】来院時は理学所見、血液検査所見のいずれも軽微であった。精査を勧めたが社会的背景もあり後日の検査を希望された。その後腹痛が増強したため検査入院としたが、発熱、下痢はなく、血液検査所見の増悪も認めなかった。注腸では回腸末端に限局した粘膜粗造および縦走潰瘍様の所見を認めた。下部消化管内視鏡検査ではバウヒン弁から回腸末端に粘膜粗造及びびらんを認めた。絶食にて腹部症状は改善し、経口栄養剤は腹痛なく摂取できた。クローン病および感染性腸炎を鑑別としていたが早期退院、診断的治療を希望されたため経口栄養剤継続、5-ASAでの治療を開始し退院とした。その後細菌検査室からエルシニア腸炎の疑いがあるとの報告があり、また退院後腹部症状が再増悪していたため、外来にてLVFXの内服を開始した。後にYersinia enterocoliticaが組織培養検体から同定され、抗体価の上昇も確認され、確定診断となった。LVFX投与後症状は速やかに改善し、5-ASA中止後も経過は良好であった。
【考察】エルシニア腸炎は好発部位、臨床所見、画像所見上クローン病との鑑別が問題となる。クローン病を疑った際にはエルシニア腸炎の可能性を念頭に置き検査を行う必要があり、特に組織培養や詳細な内視鏡観察が有用であると考えられた。
【結語】クローン病との鑑別を要したエルシニア腸炎の1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 エルシニア, クローン病