セッション情報 一般演題

タイトル 039:

交通事故による鼠径ヘルニア嵌頓と外傷性回腸穿孔を併発した1例

演者 北村 英嗣(都城市郡医師会病院外科)
共同演者 内山 周一郎(都城市郡医師会病院外科), 金丸 幹郎(都城市郡医師会病院外科), 佐野 浩一郎(都城市郡医師会病院外科), 末田 秀人(都城市郡医師会病院外科), 千々岩 一男(宮崎大学医学部腫瘍機能制御外科学)
抄録 急性腹症において複数の病態が混在している場合、短時間の術前診断で病態のすべてを把握することはしばしば困難である。今回、交通事故により鼠径ヘルニア嵌頓と外傷性回腸穿孔を併発した1例を経験したので報告する。症例は68歳男性で、バイクで走行中に転倒しハンドルで下腹部を打撲した。その後、左下腹部に疼痛が出現し増強したため、同日当科を受診した。診察時、左鼠径部に高度腫脹を認めた。以前より無治療の左鼠径ヘルニアの既往があり、受傷時の腹圧上昇による鼠径ヘルニアの嵌頓状態と考えられた。また、腹部CTでS状結腸が脱出しており、さらに陰嚢内および腹腔内に遊離ガス像を認めた。以上のことから、鼠径ヘルニアの嵌頓に加えてS状結腸穿孔も併発していると考えられたため、緊急手術を施行した。左鼠径部よりアプローチし、ヘルニア嚢を開放したところ、S状結腸と食物残渣を認めた。脱出したS状結腸を検索したが明らかな穿孔箇所を認めなかった。このため、穿孔の原因が他にあると考え、腹部正中切開で開腹したところ、回腸末端より20cm口側の回腸に穿孔を認めた。回腸穿孔部の閉鎖術およびヘルニア根治術を施行後、腹腔内にドレーンを留置して手術を終了した。術後経過は良好で、術後8日目に退院とした。【考察】今回、腹部打撲による腹圧上昇を契機に2つの病態が同時に出現した1例を経験した。自験例の病態として、受傷時の腹圧上昇により回腸穿孔が起ったと同時に、S状結腸と遊離ガスがヘルニア門より脱出したと考えられた。腹部外傷時の消化管穿孔の原因として小腸穿孔は比較的頻度が高いことから、腹部外傷時には小腸穿孔を常に意識しながら、術前CT等で注意深く観察する必要があると考えられた。
索引用語 鼠径ヘルニア嵌頓, 外傷性回腸穿孔