セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専56:

診断に苦慮した肝炎後再生不良性貧血の一例

演者 園田 隆賀(熊本大学消化器内科)
共同演者 渡邊 丈久(熊本大学消化器内科), 泉 和寛(熊本大学消化器内科), 藤江 里美(熊本大学消化器内科), 川崎 剛(熊本大学消化器内科), 吉丸 洋子(熊本大学消化器内科), 瀬戸山 博子(熊本大学消化器内科), 楢原 智子(熊本大学消化器内科), 福林 光太郎(熊本大学消化器内科), 立山 雅邦(熊本大学消化器内科), 田中 基彦(熊本大学消化器内科), 佐々木 裕(熊本大学消化器内科)
抄録 【症例】20歳男性【主訴】特になし【既往歴】特になし、生来健康。【現病歴】超音波検査学の学生実習中に被験者として腹部超音波検査をされた際に異常所見を認めたため、当科紹介受診となった。腹部超音波検査では肝実質の鱗状、網目状の変化、肝辺縁の軽度鈍化、および脾腫を認めた。血液検査上、トランスアミナーゼは正常であったが、白血球2300/ml, Hb13.2 g/dl, PLT4万/dlと著明な血小板減少を認めた。各種ウイルス検査や自己抗体は陰性であり、何らかの肝疾患や特発性門脈圧亢進症(IPH)などを念頭に鑑別を進めた。飲酒歴は機会飲酒程度であった。肝生検の結果は、グリソン氏鞘の線維性拡大とbridging fibrosisが一部目立っており、肝細胞の壊死、変性や小型の異常血管の出現などを認めた。また軽度であるがリンパ球や組織球主体の炎症細胞浸潤を認め、非特異的炎症を伴う線維化の所見であった。しかし精査の結果、肝疾患の原因は特定するに至らず、またIPHも否定的であった。また肝障害の程度に比べ血小板が低値であり、血液疾患の鑑別の為に施行した骨髄穿刺の結果、骨髄の低形成を認め再生不良性貧血と診断した。健康診断時には異常は指摘されておらず、肝炎発症の時期は特定できないが、明らかな肝組織障害像があり、その後に生じた再生不良性貧血であるため、肝炎後再生不良性貧血と考えられた。【考察】後天性再生不良性貧血には原因不明の一次性、薬剤や化学物質による二次性、更に特殊型として肝炎後再生不良性貧血やPNH-再生不良性貧血症候群などがある。肝炎からみた本疾患の発症の頻度は比較的まれであるが、若年者で肝障害と血小板低値を観た際には同疾患を鑑別に挙げる必要があることを認識させられた症例であり、考察を加えて報告する。
索引用語 肝炎後再生不良性貧血, 若年者