セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研06:

止血困難だった出血性十二指腸潰瘍の一例

演者 長友 周三郎(九州大学大学院病態機能内科学)
共同演者 平田 敬(九州大学大学院病態機能内科学), 池上 幸治(九州大学大学院病態機能内科学), 森山 智彦(九州大学大学院病態機能内科学), 江崎 幹宏(九州大学大学院病態機能内科学), 松本 主之(九州大学大学院病態機能内科学), 田畑 寿彦(直方中央病院消化器科), 熊谷 好晃(九州大学大学院形態機能病理学), 一瀬 理沙(九州大学大学院形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大学大学院形態機能病理学), 北園 孝成(九州大学大学院病態機能内科学)
抄録 症例は72歳女性で、33歳時に小腸・大腸型Crohn病を発症し、当院外科で回腸と上行結腸を切除されている。その後近医でサラゾピリン製剤のみで加療されていたが、Crohn病は寛解を維持していた。2013年2月頃より下痢、全身倦怠感が出現し、5月1日より前医で入院加療されていたが改善なく、5月末頃より構音障害、嚥下障害、四肢失調が出現したため、当院転院となった。入院時は意識清明で、頭部CT・MRIで頭蓋内に急性期病変を認めなかった。ギラン・バレー症候群や脊髄小脳変性症などを疑い、腰椎穿刺を検討していたが、6月4日朝からタール便が出現した。血液検査でHb9.0→2.8mg/dLと急激な貧血の進行を認め、上部消化管内視鏡検査で、十二指腸球後部に露出血管を伴った開放性潰瘍を認めたため、止血鉗子を用いて露出血管を焼灼した。一旦止血を得たが、翌昼に多量の下血を認め、ショック状態となったため、再度上部消化管内視鏡検査を施行したところ、前日止血していた十二指腸球後部潰瘍からの出血が疑われたが、視野確保困難で、内視鏡的止血を断念した。緊急で血管造影検査を施行したところ、後上膵十二指腸動脈から十二指腸への造影剤の漏出を認め、同血管に対し塞栓術を施行し止血した。しかしその後も、数日おきに後上膵十二指腸の分枝あるいはその近傍の血管からの出血を繰り返し、計5回のIVRによる止血術を行った。6月16日に6回目の血管造影を行い、十二指腸への造影剤の漏出を認めたが、責任血管への選択的挿入、および塞栓は困難と判断し、家族へ十分なICを行ったうえで、止血術は施行しなかった。以後も消化管出血は持続したが、補液のみでbest supportive careを行い、6月28日に永眠された。ご家族の同意が得られたため、剖検を行った。今回内視鏡治療およびIVRによる治療抵抗性の出血性十二指腸潰瘍を報告する。
索引用語 十二指腸潰瘍, 出血