セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研36:

小腸壊死を伴う上腸間膜静脈.脾静脈血栓症の1救命例

演者 竹島 裕貴(済生会熊本病院)
共同演者 土居 浩一(済生会熊本病院), 問端 輔(済生会熊本病院), 小川 克大(済生会熊本病院), 古橋 聡(済生会熊本病院), 田中 秀幸(済生会熊本病院), 杉山 眞一(済生会熊本病院), 井上 耕太郎(済生会熊本病院), 緒方 健一(済生会熊本病院), 高森 啓史(済生会熊本病院)
抄録 【はじめに】門脈血栓症は様々な基礎疾患を背景に起こる。上腸間膜静脈にまで血栓形成が進展した場合には消化管壊死を惹起して緊急手術を必要となることがあり、その死亡率は8~17%と報告されている。【症例】症例は62歳女性。2011年に脳梗塞にて当院で治療癧がある。その際、脳梗塞の原因としてプロテインC欠損症を指摘され、抗凝固療法を行っていた。今回は2013年7月X日頃から腹痛が出現した。その4日後には腹痛の増悪を認め、当院救命救急センター受診した。腹部造影CT上、上腸間膜静脈と脾静脈合流部から上流は両静脈とも全長にわたり血栓形成を認めたが、門脈本幹の血流は認められた。空腸の一部に虚血領域と肝表に少量の腹水貯留を認めた。血液検査所見はCK値、ミオグロビン値、乳酸値は基準値内であったため、消化管壊死は生じていないと判断し、絶食とヘパリンおよびXa阻害剤投与による経過観察を開始した。腹痛は一旦は軽減傾向であったが、その3日後には腹痛の増悪を認めた。腹部造影CT再検上を撮影したところ、空腸の虚血所見に変化はなく、腹水の増量傾向を認めた。腹水穿刺では腹水の性状は淡血性であった。CK値、ミオグロビン値、乳酸値は基準値内であったが、消化管壊死の可能性が否定できないため、同日審査腹腔鏡を施行した。空腸が2~3cmにわたり壊死により腸間膜とともに黒色調に変色していたため、壊死と鬱血と浮腫の強い領域を含めて20cm小腸切除を行った。門脈系の鬱血が予想されたため、吻合は行わずに断端を双孔式の人工肛門造設を行った。術後は抗凝固療法をヘパリンとXa阻害剤静脈投与からワーファリン内服に変更して、経時的に画像評価を行った。上腸間膜静脈と脾静脈内の血栓は縮小し、小網内に肝内への側副血行が形成されていた。来院時と比較して脾臓の腫大も認められた。今後は腹部の炎症が落ち着いてから人工肛門閉鎖を予定している。【考察】上腸間膜静脈に血栓形成を認めた場合は、腹部症状や腹水の性状や血液検査値を参考に、必要時には腹腔鏡による腹腔内の観察が有用と考えられた。
索引用語 門脈血栓症, 小腸壊死