セッション情報 一般演題

タイトル 122:

潰瘍性大腸炎活動期に自己免疫性膵炎の合併が疑われた1例

演者 山内 康平(佐賀県医療センター好生館)
共同演者 緒方  伸一(佐賀県医療センター好生館), 樋口  徹(佐賀県医療センター好生館), 山本  甲二 (佐賀県医療センター好生館)
抄録 【緒言】潰瘍性大腸炎の経過中に発症する膵炎は2.9%と比較的稀な腸管外合併症であるが、近年いわゆる2型自己免疫性膵炎との関連も指摘されている。今回我々は潰瘍性大腸炎活動期に自己免疫性膵炎の合併が疑われた1例を経験したため報告する。【症例】20代女性。8歳時より全大腸炎型潰瘍性大腸炎を発症し、他院にて複数回サラゾスルファピリジン、プレドニゾロン(PSL)での寛解導入、維持療法が施行された。16歳時より別の医院にて不定期受診を行っていた。当院受診3ヶ月前に下痢、下血症状が出現し、前医でメサラジン(5-ASA)3g/日内服が開始となった。その後も10行/日程度の下痢症状が継続し、入院4日前より心窩部痛、嘔気が出現したため精査加療目的に当院受診、入院となった。症状、画像検査より活動期潰瘍性大腸炎と診断した。嘔気のため内服困難であり入院2日目より5-ASA1g/日注腸、PSL40mg/日点滴静注を開始。3日目より5-ASA注腸から5-ASA4g/日内服に変更、7日目よりPSL30mg/日内服に変更した。12日目より37度台の発熱が出現し、13日目より食思不振、心窩部痛の訴えが出現した。14日目の上部消化管内視鏡検査では軽度の十二指腸炎の所見を認めるのみであった。その後も症状が継続していたため16日目に腹部CTを施行し、膵のびまん性腫大を認め、CRP上昇、血清リパーゼ上昇あり、急性膵炎と診断した。MRIにて膵周囲にT2延長域がみられ、主膵管には長い範囲で不均一な狭窄像を認め、自己免疫性膵炎が強く疑われた。血清IgG4 <3mg/dl、抗核抗体80倍であった。薬剤性膵炎の可能性も否定できなかったため5-ASA、PSLは一旦中止し、17日目よりナファモスタットメシル酸塩の投与を開始。19日目には腹部症状、炎症反応の改善を認め、20日より食事を開始したが症状の増悪を認めなかった。入院中に施行したDLSTでは5-ASA、PSLいずれも陰性であった。以後も腹部症状の再燃なく31日目に退院となった。画像所見、血清所見からは2型自己免疫性膵炎がより強く疑われ、潰瘍性大腸炎に合併する例として比較的稀と考えられたため、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 潰瘍性大腸炎, 自己免疫性膵炎