抄録 |
【はじめに】2007年に施行されたがん対策基本法、およびがん対策推進基本計画において、がん治療の初期段階からの緩和ケアの実施が重点的に取り組む課題の一つとして位置づけられた。当院では2009年に都道府県がん診療連携拠点病院の認定を受け、緩和ケアチームによるコンサルテーション型のがん診療支援を行ってきた。今回、当チームにおける各種消化器癌に対する支援状況を報告する。【方法】2007年6月~2012年2月に当院緩和ケアチームへ依頼のあった消化器癌症例について解析した。【結果】総依頼数708例中消化器癌は211例だった。平均年齢69歳(13-90)、男女比128:83、原疾患は、下咽頭癌:12例、食道癌:28例、胃癌:37例、大腸癌:29例、肝癌:32例、胆管癌:22例、膵癌:38例、その他:13例だった。主治医による予後予測は、3ヶ月未満:59例、3-6ヶ月未満:81例、6ヶ月以上:9例、不明:62例と、多くは病状が進行した状況だった。依頼内容は、症状緩和118例(疼痛62, 倦怠感32, 嘔気27,不眠16, 呼吸苦4,その他18, 重複有)、精神的サポート:36例、家族ケア:33例、療養場所の選択:128例だった。介入期間中央値は13日(1-320)だった。主な転帰は、自宅退院79例(在宅支援診療所連携:52)、転院69例(緩和ケア病棟転院:37)、在院死亡50例だった。依頼内容によらず、多くの例で気持ちのつらさや家族ケアを含め多面的な支援を要した。症状緩和では、オピオイドを中心とした薬剤投与が治療の主体だが、個々の患者の状況に応じて、イレウス解除術、ストーマ造設等の外科手術、消化管ステント挿入術、腹水貯留に対するDenver shuntや骨転移に対する経皮的椎体形成術などのIVR治療、また疼痛に対する神経ブロックや持続硬膜外麻酔法などを積極的に施行し、経口摂取の確保をはじめとするQOLの回復、維持にあたってきた。【結語】消化器癌は病状の進行に伴い多様な症状を呈してくる。QOLを良好に保つために、患者・家族の不安にチームで対応しつつ、主治医との連携のもと、患者の状況に応じた集学的な治療を迅速に行うことが重要である。 |