セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専37:

腸炎で発症し、経過中、周期熱・全身関節炎を併発し、地中海熱と診断し得た1例

演者 上原 なつみ(宮崎大学病院第二内科)
共同演者 山本 章二朗(宮崎大学病院第二内科), 三池 忠(宮崎大学病院第二内科), 安倍 弘生(宮崎大学病院第二内科), 山路 卓巳(宮崎大学病院第二内科), 橋本 神奈(県立宮崎病院), 夏田 朱一郎(宮崎大学病院第二内科), 坂口 舞(宮崎大学病院第二内科), 竹田 幸子(県立延岡病院), 鈴木 翔(宮崎大学病院第二内科), 下田 和哉(宮崎大学病院第二内科)
抄録 【はじめに】今回我々は、慢性下痢を伴う腸炎で発症し、経過中、周期熱・全身関節炎を併発し、コルヒチンが奏功した非定型地中海熱(Familial Mediterranean fever:FMF)の症例を経験したので報告する。【症例】21歳、男性。3年前より4~5行/日の水様下痢が出現。その1年後、血便を伴い、下痢回数が8~10行/日となり、近医を受診。大腸内視鏡検査(colonoscopy:CS)で盲腸からS状結腸下部にかけて、右半結腸優位にびまん性に浮腫と発赤の強い顆粒状粘膜を全周性に認め、CS所見は潰瘍性大腸炎(Ulcerative colits:UC)に類似していた。直腸は血管透見正常であった。生検では全大腸に慢性炎症所見とリンパ球浸潤を認めた。以上よりUCなどを疑い、メサラジンを開始されたが、膵炎を発症したため、中止され、以後当科で整腸剤にて経過観察としたが、下痢は遷延した。1年前より、2~3か月に1回の周期で39度台の発熱が出現し、同時に全身関節の腫脹・疼痛が出現するようになった。発作期はCRP10mg/dl台まで上昇するが、明らかな感染兆候を認めず、血液検査でも各種自己抗体は陰性であり、症状は2~3日で自然寛解するという経過を繰り返していた。CTやGaシンチグラフィ、PETなどでも大腸以外に病変なく、その後のCS所見は初回CSと同様であった。病理組織検査は全大腸に好酸球浸潤を伴う陰窩炎の所見がみられ、一般的なUCの病理像と比較し、杯細胞の脱落所見に乏しかった。周期熱、関節痛などよりFMFを疑い、遺伝子検査を施行したところ、MEFV7のintronに一箇所の変異、MEFV9においてintron・exonともに一箇所の変異を認めた。以上より非定型FMFと考え、コルヒチン0.5mg/dayの内服を開始し、周期熱発作の重症度が軽減し、下痢は改善した。【考察】本症例を通して、右半結腸炎型で、難治性UCとして治療されている症例の中に。本症例のようなFMFに合併する腸炎が隠れている可能性があり、病理像や遺伝子変異を探究することで、UCと区別でき、コルヒチンにて良好な経過を辿る症例があると考え、文献的考察を含めて報告する。
索引用語 地中海熱, 腸炎