セッション情報 一般演題

タイトル 074:

脾摘後門脈血栓症の検討

演者 風呂井 彰(霧島市立医師会医療センター)
共同演者 久米村 秀(霧島市立医師会医療センター), 井上 真岐(霧島市立医師会医療センター), 二渡 久智(霧島市立医師会医療センター), 門野 潤(鹿児島大学大学院 心臓血管・消化器外科学), 井本 浩(鹿児島大学大学院 心臓血管・消化器外科学)
抄録 【はじめに】肝硬変における脾摘の効果に,脾機能亢進症の改善(インターフェロン療法,肝細胞癌治療の完遂),門脈圧亢進症の改善などが挙げられる一方,術後高率に発生する門脈血栓症が課題の一つである.しかしその成因については未だ確固たる解釈は無い.今回我々は硬変肝脾摘群と正常肝脾摘群での門脈血栓の発症を比較しその成因について検討したので報告する.【対象及び方法】当院で2010年6月から2013年7月までの3年間に脾臓摘出を行った12例について,術前・術後の血小板数,造影CTによる門脈血栓症合併の有無について検討した.【結果】12例の内訳は,肝硬変合併肝癌で脾摘を併施した7例(硬変肝脾摘群),胃全摘のリンパ節廓清,鎌状赤血球症,脾リンパ腫など正常肝で脾摘を行った5例(正常肝脾摘群)である.【結果】硬変肝脾摘群7例の術前血小板平均値は約6万で術後16万で安定した.また正常肝脾摘群5例の術前血小板平均値は約20万で術後34万で安定した.硬変肝脾摘群の7例中5例(71%)に門脈系塞栓を認め,その内,脾静脈及び門脈本幹ともに血栓を認めたものは3例(43%),脾静脈のみに認めたものが2例(28%)で,門脈本幹のみに認めたものは無かった.正常肝脾摘群5例中画像評価できた4例で門脈系血栓を認めたものは無かった(0%).【考察・結語】硬変肝脾摘群では正常肝脾摘群に比べ術後血小板数はより低値で凝固系亢進状態にあるとは考えにくい.また,両群間での術後脾静脈血流減少への影響はほぼ同等と思われるのに拘らず,硬変肝脾摘群で高率に術後門脈系血栓を併発する.これらのことから,硬変肝脾摘後の門脈系血栓の成因には術後血小板増加や脾静脈血流低下による影響よりは,門脈圧亢進症そのものによる周術期門脈系血液うっ滞の影響が大きいことが伺われた.また脾静脈血栓を伴わない門脈本幹血栓は無く,脾静脈血栓が脾摘後門脈系血栓の開始点である可能性も考えられた.
索引用語 脾摘, 門脈血栓