セッション情報 シンポジウム1「高齢者に対する消化器病診療と今後の展望(消化管、肝胆膵)」

タイトル S1-10:

当科における高齢肝癌患者に対するラジオ波焼灼療法の現状

演者 織部 淳哉(大分大学消化器内科)
共同演者 清家 正隆(大分大学消化器内科), 岩尾 正雄(大分大学消化器内科), 正 宏樹(大分大学消化器内科), 所 征範(大分大学消化器内科), 吉原 光江(大分大学消化器内科), 西村 順子(大分大学消化器内科), 遠藤 美月(大分大学消化器内科), 本田 浩一(大分大学消化器内科), 村上 和成(大分大学消化器内科)
抄録 (はじめに)C型肝炎患者の高齢化に伴い、肝癌発症年齢も高齢化の傾向にある。高齢であるために他の疾患を合併している場合が多く、また治療に伴う合併症も問題となることが推測される。ラジオ波焼灼療法(RFA)は肝癌治療の中心となる比較的侵襲が低い治療法である。今回当科における高齢肝癌症例へのRFAの現状について検討した。(対象と方法)2006年から2013年6月までに当科で279例875回のRFAを施行、高齢群と非高齢群における合併症の割合を調べた。次に全例から初発肝癌症例143例(平均年齢70.1歳、男性87例、女性57例)を選んで、高齢群46例(平均年齢79.8歳、男性29例、女性17例)と非高齢群97例(平均年齢65.5歳、男性58例、女性39例)に群別した。それぞれのRFAによる合併症と臨床背景(Child-Pugh、Alb、PT、PLT、AFP、DCP)、初回RFA施行後の累積生存率について比較検討した。本検討においては、高齢者は75歳以上と定義した。(結果)全RFAの内訳は高齢群354回、非高齢群に520回だった。合併症は、高齢群で出血関連12例、肝梗塞3例、膿瘍1例、胆管損傷2例、胸水1例、門脈血栓1例で20例(5.6%)、非高齢群では出血関連14例、肝梗塞1例、膿瘍2例、胆管損傷6例、胸水1例、門脈血栓2例、皮膚障害1例で27例(5.2%)、両群の合併症頻度に有意差は認められなかった。初回例においては、高齢群でのRFA合併症は肝梗塞3例、肝膿瘍1例、血胸1例で6.8%、非高齢群では門脈血栓1例、血胸1例、皮下血腫1例、胆管拡張1例で4.1%、両群で有意差は認められなかった。背景の比較では、Child-Pugh A/B/Cは高齢群で34/7/1、非高齢群で71/14/1で有意差はなく、その他血小板数や腫瘍マーカーでも有意差はなかったが、腫瘍サイズで高齢群は平均22.5ミリメートル、非高齢群で19.9ミリメートルと高齢群で大きい傾向にあった(p=0.021)。累積生存率は両群で有意差は認められなかった。(結語)ラジオ波は高齢者に対しても安全かつ有効な治療法である。
索引用語 RFA, HCC