共同演者 |
上原 なつみ(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 三池 忠(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 鈴木 翔(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 坂口 舞(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 夏田 朱一郎(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 山路 卓巳(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 安倍 弘生(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 岩切 久芳(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 蓮池 悟(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 山本 章二朗(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 永田 賢治(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 土屋 和代(宮崎大学医学部腫瘍機能制御外科学), 池田 拓人(宮崎大学医学部腫瘍機能制御外科学), 田中 弘之(宮崎大学医学部病理学講座 腫瘍・再生病態学分野), 頼田 顕辞(宮崎大学医学部病理学講座 腫瘍・再生病態学分野), 秋山 裕(宮崎大学医学部病理学講座 腫瘍・再生病態学分野), 片岡 寛章(宮崎大学医学部病理学講座 腫瘍・再生病態学分野), 千々岩 一男(宮崎大学医学部腫瘍機能制御外科学), 下田 和哉(宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野) |
抄録 |
【症例】19歳男性. 【現病歴】生来健康であった. 2013年4月より右下腹部痛を自覚した. 徐々に増悪傾向を認め, 腹部膨満感, 激しい腹痛を伴い近医を救急受診した. 腹部CTにて腹腔内に大量腹水を認め, 精査のため当科紹介転院となった. 【経過】炎症反応は正常値で, 胸腹CTにて明らかな腫瘍は指摘できなかった. PETにて右上腹部に淡い集積を認めたが, 上下部消化器内視鏡検査にて有意な所見を認めなかった. また腹水検査にてADA 51.6U/L, ヒアルロン酸36,700ng/mlと異常高値を認めたが, アスベストの曝露や結核の既往はなかった. 絶食, 腸管安静, 広域抗菌薬にて腹水改善しなかったが, 腹部エコーにて骨盤腔内に蜂巣状構造物を認め, イレウスを合併した. 腹部CTにて小腸や結腸壁は肥厚し, 造影効果が増強しており, 腹膜炎による麻痺性イレウスと腹腔内膿瘍と診断された. その後, 腹痛, 腹満感が著明となり, 原因究明と症状緩和のため, 本人家族と相談し, 緊急手術となった. 腹腔内膿瘍や大量腹水の原因として腹膜や腸間膜に異常所見なく, 腸管穿孔や悪性腫瘍など指摘できず, 当院外科にて腹腔内膿瘍ドレナージと周囲の癒着剥離術を施行した. 術後, 徐々に症状の改善を認め, 腹水の再燃なく軽快した. 数回の各種培養検査では有意な菌は検出できなかったが, 便培養より非定型抗酸菌であるMycobacterium gordonaeが検出された.【考察】我々は, 若年発症の難治性腹膜膿瘍の一例を経験した. 麻痺性イレウスを来たし, 緊急で外科的ドレナージと癒着剥離術を施行し, 救命できた. 便培養より土壌, 水などの環境に生息し, 弱毒性で感染源や感染経路の特性が困難な非定型抗酸菌のMycobacterium gordonaeを検出し, 腹膜膿瘍との関連を疑った. 非常に稀な症例と考え, 文献的考察を加え報告する. |