セッション情報 一般演題

タイトル 063:

繰り返す多発S状結腸憩室炎の経過中に併発したS状結腸膀胱瘻の1例

演者 阪上 尊彦(佐賀社会保険病院 消化器肝臓内科)
共同演者 平田 和之(佐賀社会保険病院 消化器肝臓内科), 檀上 晶子(佐賀社会保険病院 消化器肝臓内科), 福森 一太(佐賀社会保険病院 消化器肝臓内科), 矢野 洋一(佐賀社会保険病院 消化器肝臓内科), 佐田 通夫(久留米大学医学部内科学講座消化器内科部門)
抄録 症例は82歳、男性。65歳時より、慢性閉塞性肺疾患に対して近医に通院中であった。2012年6月27日ごろより下腹部痛と陰嚢痛を認めた。近医で抗生剤の点滴治療をされたが症状は改善しないため、6月29日に当院当科を紹介受診となった。来院時、37.1℃の微熱、左下腹部および陰嚢部の自発痛と圧痛を認めた。血液生化学検査上、WBC:12700/μL(Neut:78.7%)、CRP:8.6mg/dLと炎症反応の上昇を認め、尿検査では混濁(+1)、潜血(3+)、白血球(3+)、また便潜血(+)であった。画像検査では腹部造影CT検査および大腸内視鏡検査を施行し、S状結腸憩室炎および尿路感染症の診断となり入院となった。輸液管理と抗生剤投与を開始し腹部症状と血液生化学データは軽快傾向であったため、食事摂取を再開した。しかし再度、腹部症状の再燃と炎症反応の再上昇を認めたため、8月14日に経過観察のため腹部造影CT検査を施行した。S状結腸の壁肥厚、周囲脂肪組織の吸収値上昇は前回のCT検査より目立ち、さらに今回は膀胱内に空気像を認め結腸膀胱瘻を疑った。そこで点滴静脈腎盂造影(DIP)および注腸造影検査(BES)を施行した。DIPでは明らかな異常所見は認めなかったが、BESでは腸管から造影剤流出を認め膀胱が描出された。以上の経過から、S状結腸膀胱瘻を合併する多発S状結腸憩室炎を最終診断とした。9月12日に腹腔鏡補助下S状結腸部分切除術、S状結腸-直腸吻合、膀胱瘻切除術を施行した。術後、症状再燃なく外来にて経過観察中である。今回我々は繰り返す多発S状結腸憩室炎の経過中に併発したS状結腸膀胱瘻の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。結腸憩室炎および難治性の尿路感染症を繰り返す症例には、結腸膀胱瘻も念頭におき診療にあたる必要があると考える。
索引用語 S状結腸膀胱瘻, S状結腸憩室炎