セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専44:

ステロイド経口投与下の内視鏡的バルーン拡張術が奏功した直腸狭窄を呈した虚血性腸炎の1例

演者 川崎 寛子(長崎県上五島病院)
共同演者 本田 徹郎(長崎県上五島病院), 山口 将太(長崎県上五島病院), 八坂 貴宏(長崎県上五島病院)
抄録 症例は60歳、男性。急性アルコール中毒に伴う脱水症で倒れているところを発見され入院。入院時に下血が認められたため第3病日に大腸内視鏡検査(CS)を施行したところ、上行結腸から直腸にかけて不整形潰瘍が散在し、S状結腸と直腸Raにおいては全周性の強い炎症所見があり虚血性腸炎に矛盾しない所見であった。第22病日にCSを再検したところ、直腸からS状結腸にかけて著しい狭窄を認めた。狭窄部のスコープの通過は困難であり狭窄型の虚血性腸炎と診断し、治療としてSASP3000mg、5-ASA1g注腸を開始した。第48病日のCSでは狭窄部の炎症および浮腫は軽減するも瘢痕に伴う強い狭窄があり、内視鏡的バルーン拡張術を施行しスコープの通過は可能となった。その後、ステロイド経口投与(PSL30mg)およびトラニラスト300mgの内服を開始し、ステロイド20mgの注腸も併用したうえで狭窄予防を行った。第58病日と第72病日に内視鏡的バルーン拡張を施行。第86病日のCSにて狭窄部のスコープ通過が良好となりバルーン拡張は不要となったためPSLの効果が得られたと判断しPSLの用量の漸減(2週間毎に5mg)を行い第157病日に内服終了とした。第161病日に施行したCSでは狭窄の再燃はなくスコープ通過可能な開存の状態が維持されていた。食道ESD後の狭窄に対するステロイドの経口投与、もしくは局注療法の有効性は報告されているが、大腸狭窄病変に対するステロイド内服の有効性の報告は極めて少ない。本症例は下部消化管狭窄に対してステロイド投与が有効であることが示唆された貴重な1例であると考えた。
索引用語 直腸狭窄, ステロイド