抄録 |
虚血性十二指腸炎に急性膵炎を合併した一例九州労災病院 消化器内科安森 翔, 加来 豊馬, 板場 壮一, 田代 茂樹, 宮田 誠一, 田中 俊行, 村尾 寛之, 國吉 政美症例は73歳, 男性, 主訴は心窩部痛. 脳梗塞後でバイアスピリン(100mg/day), エパデールS(900mg/day)内服されていた. 2013年5月に突然の心窩部痛が出現し, その後嘔吐, 水様便を認め, 当院を受診した. 血液検査では白血球の上昇(WBC 11700/μl)のみを認めた. 胸腹部造影CTを撮影し大動脈弓部~腹部大動脈にかけて不整形の壁在血栓を認めたが心窩部痛の原因となるような異常所見は認めなかった. 原因検索目的で上部消化管内視鏡を施行し, 上十二指腸角から下行脚にかけて縦走傾向のある多発した浅い潰瘍を認め虚血性変化が考えられた. 腹腔動脈分岐部に壁在血栓があることから虚血性十二指腸炎と診断した. 絶食・輸液加療を行ったが, 心窩部痛・38度台の発熱が持続し, 炎症反応の改善がみられないことから, 第4病日に再度腹部造影CTを撮影した. 膵体尾部の軽度腫大と膵体部実質造影不良域及び膵周囲の液貯留と脂肪織の混濁があり, 急性膵炎を合併していた(予後因子:3点(年齢, SIRS診断基準, CRP), 造影CT: Grade 1). 虚血性十二指腸炎に引き続き, 膵の虚血で急性膵炎を発症したと考えた. 絶食, 輸液・蛋白分解酵素阻害薬・抗生剤・ヘパリン持続投与で急性膵炎の加療を行った. 徐々に腹痛, 炎症反応高値は改善した. 後日施行した上部消化管内視鏡では, 縦走傾向のある浅い潰瘍は消失し一部瘢痕化しているのを確認した.【考察】これまでの症例報告では, 虚血性十二指腸炎に合併した急性膵炎の報告は少なく文献的考察を加えて報告する. |