セッション情報 シンポジウム1「高齢者に対する消化器病診療と今後の展望(消化管、肝胆膵)」

タイトル S1-02:

高齢者における胃癌ESD症例の検討

演者 向井 康二(原三信病院消化器科)
共同演者 岩田 真悠子(原三信病院消化器科), 中野 佳余子(原三信病院消化器科), 西嶋 健一(原三信病院消化器科), 岩尾 梨沙(原三信病院消化器科), 國木 康久(原三信病院消化器科), 兼城 三由紀(原三信病院消化器科), 中村 典資(原三信病院消化器科), 松坂 浩史(原三信病院消化器科), 野口 賢一(原三信病院消化器科), 永瀬 章二(原三信病院消化器科), 千々岩 芳春(原三信病院消化器科), 河野 眞司(原三信病院臨床病理部)
抄録 当院で2008年4月から2013年8月までに内視鏡的胃粘膜下層剥離術(ESD)を施行された早期胃癌183例を対象に、非高齢者(65歳未満)、前期高齢者(65歳以上75歳未満)、後期高齢者(75歳以上)の3群に分けて比較検討した。全体での治療成績は、切除時間94.4分、切除片径41.2±15.7mm、一括切除率96.7%、治癒切除率86.3%、穿孔率2.7%、後出血率6.0%、誤嚥性肺炎率2.7%であった。非高齢者群/前期高齢者群/後期高齢者群はそれぞれ44/65/74例であり、治療成績については、切除時間(分)は87.2/91.7/96.6(有意差無し)、切除片径(mm)は37.9±11.7/38.5±13.9/45.4±18.3、一括切除率(%)は100/96.9/94.6、治癒切除率(%)は88.9/93.8/78.4、穿孔率(%)は2.2/4.7/1.4、後出血率(%)は0/6.3/8.1、誤嚥性肺炎率(%)は2.2/0/5.4であった。他院の比較検討では、高齢者の治療成績や併発症の発生率に有意差は無いとする報告が多いが、当院では後期高齢者において切除片径の大きさで有意差(非高齢者vs後期高齢者:p<0.01、前期高齢者vs後期高齢者:p<0.05)がみられ、治癒切除率がやや低く、併発症の発生率が高い傾向にあった。理由として、後期高齢者群では外科手術を回避する傾向があり、切除範囲の広い症例も多いことから、治療成績が低下し、併発症の頻度が上昇したものと考えられた。当院での胃癌ESDは全体として安全に施行されているが、高齢者では基礎疾患を有する頻度が高いこともあり、併発症の発生率の高さを念頭に置き対応することが必要と考えられた。
索引用語 胃ESD, 高齢者