セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専54:

肝癌に対する肝動脈化学塞栓術(TACE)後に肝膿瘍を合併した2例

演者 園田 悠紀(長崎大学 消化器内科)
共同演者 内田 信二郎(長崎大学 消化器内科), 柴田 英貴(長崎大学 消化器内科), 原口 雅史(長崎大学 消化器内科), 高木 裕子(長崎大学 消化器内科), 妹尾 健正(長崎大学 消化器内科), 吉村 映美(長崎大学 消化器内科), 加茂 泰広(長崎大学 消化器内科), 本田 琢也(長崎大学 消化器内科), 三馬 聡(長崎大学 消化器内科), 田浦 直太(長崎大学 消化器内科), 市川 辰樹(長崎大学 消化器内科), 末吉 英純(長崎大学 放射線科), 坂本 一郎(長崎大学 放射線科), 竹島 史直(長崎大学 消化器内科), 上谷 雅孝(長崎大学 放射線科), 中尾 一彦(長崎大学 消化器内科)
抄録 【背景】肝動脈化学塞栓術(TACE:Trancecatheter arterial chemoembolization)は以前より肝細胞癌(HCC)に対して広く行われている治療法である。比較的安全であり、繰り返し治療できる利点があるものの、種々の偶発症も起こりうる。治療後の偶発症の一つとして肝膿瘍が知られている。当院にて2012年1月から2013年6月にかけて施行された145例のTACE症例のうち2例でTACE後の肝膿瘍を認めたため報告する。【症例1】80歳男性。背景肝はC型慢性肝炎。糖尿病あり。以前、肝S4のHCCに対するラジオ波焼灼術(RFA)後に肝膿瘍を合併し肝右葉切除術を施行された既往あり。一年後に切除断端(S4)にHCC再発を認めミリプラチンを用いてTACEを施行した。翌日から38℃台の発熱と軽度の炎症反応上昇も認めていたが、TACE後の発熱として経過観察とした。腹部症状は認めないものの、発熱やCRP上昇が持続したため、TACE7日目に腹部CTを施行したところ、肝S1に肝膿瘍を認め、抗菌薬を開始した。TACE20日目の腹部USでは膿瘍は不明瞭化し、23日目に抗菌薬終了。その後も再燃は認めず退院となった。【症例2】63歳男性。背景肝はアルコール性肝障害。糖尿病あり。右視床出血の経過観察中に肝機能上昇出現し、腹部US/CTにて肝S4/8やS6に多発するHCCを認め当院紹介となった。肝右葉を中心にミリプラチンを用いてTACEを施行した。翌日より38℃台の発熱を認めたが、炎症反応上昇は軽度であったため経過観察とした。その後も発熱持続したため、5日目に腹部CTを施行した。肝S4/8やS6のTACE後の内部にガス像を伴う膿瘍を認めたため、抗菌薬を開始した。TACE13日目までに解熱し、炎症反応も改善したため、抗菌薬投与を終了した。その後の経過も良好にて転院となった。【考察】TACE後の肝膿瘍は0~5%と報告されており、今回当院での観察期間内でも1.4%に認められた。比較的稀な偶発症であると考えられるが、対応が遅れれば致命的な合併症にもなりうる。また、糖尿病合併例や胆道系手術既往例ではTACE後肝膿瘍をきたしやすいとの報告もある。当科で経験した2症例について若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 肝癌, TACE