セッション情報 ワークショップ3「進行肝細胞癌診療の現状と問題点」

タイトル WS3-04:

当科における進行肝細胞癌に対するソラフェニブ治療と肝動注化学療法の現状と問題点

演者 泉 和寛(熊本大学大学院 消化器内科学)
共同演者 福林 光太郎(熊本大学大学院 消化器内科学), 田中 基彦(熊本大学大学院 消化器内科学), 藤江 里美(熊本大学大学院 消化器内科学), 瀬戸山 博子(熊本大学大学院 消化器内科学), 立山 雅邦(熊本大学大学院 消化器内科学), 吉丸 洋子(熊本大学大学院 消化器内科学), 渡邊 丈久(熊本大学大学院 消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大学大学院 消化器内科学)
抄録 【目的】進行肝細胞癌の治療として、肝切除、肝移植、肝動脈化学塞栓術(TACE)、肝動注化学療法(HAIC)、化学療法、放射線治療、ソラフェニブ(SFN)治療などの治療法が施行されている。肝切除、局所治療の適応がなく肝動脈化学塞栓術(TACE)での制御困難な進行肝細胞癌に対する治療として、本邦ではSFNもしくはHAICが選択されることが多いが、両治療の選択に明確な基準はない。当科でのSFNとHAICの治療成績をまとめ、それぞれの特徴と適切な治療選択について検討した。【対象と方法】当科で2009年以降にSFNを導入し、4週以上継続できた83例(StageIII 25例、IVA 22例、IVB36例)(Child Pugh classA 74例、B 8例、不明1例)と2004年以降にHAICを施行した132例(StageIII 47例、IVA 55例、IVB 30例)(Child-Pugh classA 83例、B 43例、C 6例)を対象に奏効、全生存(OS)、無増悪生存(PFS)について検討した。【結果】SFN治療は、mRECISTでの奏効率12%(CR2例、PR8例、SD48例、PD25例)で、MST293日、一年生存率48.0%であった。多変量解析の結果、有意な予後因子は、Stage、Child-Pugh class、肝内病変制御の有無、PIVKA-II(中央値1000mAU/ml)、前治療としてHAICの有無であった。PFSの中央値は105日で、一年無増悪生存率は5%であった。PFSに関わる有意な因子は、腫瘍径、HBs抗原の有無、Child-Pugh class、前治療としてHAICの有無であった。HAIC治療は、mRECISTでの奏効率25%(CR5例、PR28例、SD55例、PD44例)で、MST283日、一年生存率39.4%であった。予後因子は、アルブミン(中央値3.5g/dl)、腫瘍型であった。PFSの中央値は129日で、一年無増悪生存率は14.3%であった。PFSに関わる有意な因子は、肝外転移の有無、ALT値(中央値48U/L)であった。【結論】今回の両治療の患者背景は異なっているが、OS、PFS因子の結果から奏効、予後因子は異なる可能性がある。またHAIC後のSFN治療例は無増悪生存、全生存ともに短いという結果となっており、HAICでの病勢制御困難な肝細胞癌に対しては、それぞれの薬物作用は異なるもののSFNへの反応性も悪いことが示唆された。
索引用語 進行肝細胞癌, ソラフェニブ