セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専67:

IgG4関連硬化性胆管炎との鑑別が困難であった膵癌の1例

演者 澤瀬 寛典(佐世保中央病院消化器内視鏡科)
共同演者 大石 敬之(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 山道 忍(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 松崎 寿久(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 小田 英俊(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 木下 昇(佐世保中央病院消化器内視鏡科), 山本 美保子(佐世保中央病院病理部), 米満 伸久(佐世保中央病院病理部)
抄録 【症例】75歳男性【主訴】自覚症状なし【既往歴】2型糖尿病、咽頭筋ジストロフィー【現病歴】2型糖尿病、咽頭筋ジストロフィーで当院内科にかかりつけ。2013年1月10日の定期受診での血液検査で肝胆道系酵素の上昇と、腹部造影CTで胆管と膵管の拡張と膵鉤部に造影効果の高い腫瘍性病変を認めたため当科紹介受診となった。【経過】ERCPでは下部総胆管に狭窄を認めたが立ち上がりはなだらかで壁不整はみられず、IDUSでは明らかな壁肥厚は認めなかった。ERBDを行った。胆管擦過細胞診ではclass Iであり、MRIの所見や腫瘍マーカーの上昇を認めないことから悪性腫瘍は考えにくく、血中IgG4値が高値(225mg/dl)であったことから総合的にIgG4関連硬化性胆管炎と診断した。1月30日に本人およびご家族に十分に説明を行った上でステロイドによる治療を開始した。肝胆道系酵素の改善を認めたが、2月7日より徐々に発熱と肝胆道系酵素の上昇が出現し、腹部CTでは膵頭部の嚢胞性病変の増大と胸腹水の出現を認めた。感染性嚢胞もしくは胆管炎からの敗血症が疑われたため原因精査および加療目的に2月25日ERCPを施行した。ERBDを行い加療継続したが、改善なく死亡した。ご家族の同意を得て死後3時間で病理解剖を行った。病理解剖では、膵鉤部に漿液性嚢胞があり、嚢胞壁には壊死が見られ膵実質に穿通していた。また嚢胞壁が接する十二指腸には穿孔が見られた。これらの部位では組織学的に癌細胞の浸潤を認めた。また周囲には出血性壊死性膵炎も併発しており、膵炎によるDICや血管透過性亢進が循環不全や呼吸不全を来たし直接死因になったと考えられた。【考察】以前より膵癌患者において血中IgG4値が上昇することが報告されている。本症例はCTやMRIの所見では膵癌として非典型的であったが、膵癌を念頭に置いて診断を必要とした1例であり、文献的考察を加えて報告する。
索引用語 膵癌, IgG4