セッション情報 研修医発表(卒後2年迄)

タイトル 研42:

副腎皮質ステロイドとアザチオプリンによる治療が奏効した、急性発症I 型重症自己免疫性肝炎の1男性例

演者 永田 典子(長崎医療センター肝臓内科)
共同演者 宮副 由梨(長崎医療センター肝臓内科), 小森 敦正(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター臨床研究センター), 成田 翔平(長崎医療センター肝臓内科), 釘山 有希(長崎医療センター肝臓内科), 佐々木 龍(長崎医療センター肝臓内科), 戸次 鎮宗(長崎医療センター肝臓内科), 橋本 悟(長崎医療センター肝臓内科), 佐伯 哲(長崎医療センター肝臓内科), 長岡 進矢(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター臨床研究センター), 山崎 一美(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター臨床研究センター), 阿比留 正剛(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター臨床研究センター), 黒濱 大和(長崎医療センター臨床検査科), 伊東 正博(長崎医療センター臨床検査科), 八橋 弘(長崎医療センター肝臓内科DELIMITER長崎医療センター臨床研究センター)
抄録 症例は36歳男性。主訴は全身倦怠感。20XX年6月より全身倦怠感が出現し、同年7月には眼球黄染を認めたため近医を受診したところ、肝胆道系酵素上昇を指摘され、精査加療目的に当科紹介入院となった。生来健康であり、肝疾患家族歴、輸血歴、発症前の通院歴、薬物内服歴、海外渡航歴はなく、飲酒は機会飲酒のみであった。身長184.3cm、体重78.2kg。入院時血液検査ではT-BIL.10.3mg/dl、D-BIL.6.3mg/dl、AST630IU/l、ALT1139IU/l、ALP479IU/l、G-GTP443IU/l、PT71.7% 、IgG1290mg/dlであり、各種肝炎ウイルスマーカー、ANA・AMA・ASMA・抗LKM-1抗体、HLA-DR3・HLA-DR4は全て陰性であった。 急性肝炎の診断にて入院後も肝生化学検査値に改善が見られず、第2病日に施行した肝生検では、リンパ球主体の炎症細胞浸潤による、中心静脈周囲肝実質を中心とした広範な壊死およびbridging necrosisを認めた。Revised international AIH study group によるスコアリングは疑診(12点)となったが、急性発症I 型自己免疫性肝炎(AIH)と診断し、第7病日より副腎皮質ステロイドパルス療法(mPSL500mg/dayX3)を導入した。ステロイド投与開始後速やかに肝酵素の低下を認めたものの、同漸減に伴い低下が遅延したため、第14・15病日に再度mPSL500mgを投与し、アザチオプリン(AZP)50mgの併用も開始した。以後は改善が明らかになり、AZPの増量、PSLは漸減し退院となった。現在外来経過観察中である。 急性発症I型AIHは重症化(T-BIL≧10 mg/dl)すると治療抵抗性となり(Abe M. et al, Clin Gastro Hepatol 2007)、生体肝移植が必要となる症例も存在する。特に自己抗体陰性で血清IgG値が高値を示さない非典型例では、免疫抑制療法の導入が遅れ、治療も不十分になることが想像される。免疫抑制療法が奏効した急性発症I 型重症自己免疫性肝炎の1男性例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。
索引用語 急性発症I 型重症自己免疫性肝炎, 自己抗体陰性