セッション情報 シンポジウム1「高齢者に対する消化器病診療と今後の展望(消化管、肝胆膵)」

タイトル 094:

術前嚥下機能評価に基づいた高齢者胃癌切除術後の誤嚥性肺炎予防の試み

演者 金高 賢悟(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
共同演者 米田 晃(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 虎島 泰洋(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 曽山 明彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 足立 智彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 北里 周(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 日高 匡章(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 藤田 文彦(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 南 恵樹(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 高槻 光寿(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 黒木 保(長崎大学大学院 移植・消化器外科), 江口 晋(長崎大学大学院 移植・消化器外科)
抄録 【はじめに】高齢化社会の到来に伴い、高齢者の胃癌に対する手術機会も増加している。しかし高齢者においては、従来の術前評価法にて明らかとならない臓器予備能の低下があり、特に潜在的な嚥下機能低下による術後誤嚥性肺炎が問題となる。当科では75歳以上の高齢者に対しては従来の術前評価法に加え嚥下機能評価を行い、潜在的な嚥下機能低下を伴った症例の発見と、誤嚥性肺炎の予防を行っており、その試みと効果について報告する。【対象と方法】2007年3月より当科にて胃切除術を施行した75歳以上胃癌症例70例。術前嚥下機能評価を導入する前の対照群43例(2011年3月以前)と、嚥下機能評価群27例(2011年4月以降)について、術前因子、手術因子および術後合併症に関して比較検討した。術前併存疾患はCharlson’s comorbidity indexにて評価し、術後合併症はClavien-Dindo分類GradeII以上とした。尚、嚥下機能評価は術前に摂食・嚥下リハ医師による嚥下造影にて施行。嚥下機能低下を認めた症例については術後経口摂取を通常の飲水からではなく、ゼリー食などの嚥下困難者用食品から開始とした。【結果】嚥下機能評価群27例中5例(18.5%)に潜在的な嚥下機能低下を認め、術後経口摂取をゼリー食から開始した。対照群と嚥下機能評価群間にCharlson’s comorbidity indexにて差なし(4 vs. 3, p=0.18)。腹腔鏡下手術率(84% vs. 74%, p=0.32)、術式(胃全摘術28% vs. 22%, p=0.60)などの手術因子に差を認めず。Clavien-Dindo分類GradeII以上の術後合併症の発生率に差はなく(39% vs. 33%, p=0.60)、術後在院日数にも差を認めなかった(15日 vs. 16日, p=0.80)。しかし、統計学的有意差は認めないものの、肺合併症の発生は対照群に多く(26% vs. 7%, p=0.24)、肺炎に対する気管切開も対照群に多く施行(12% vs. 0%, p=0.17)されていた傾向を認めた。【まとめ】75歳以上の高齢者に対する術前嚥下機能評価は、潜在的な嚥下機能低下を伴う症例を発見し、誤嚥性肺炎に対する予防策をとることで肺合併症やその重症化による気管切開を減少させうる可能性がある。
索引用語 高齢者, 胃癌