セッション情報 専修医発表(卒後3-5年)

タイトル 専64:

ESTで軽快し、乳頭機能不全症が疑われた1例

演者 都甲 和美(大分赤十字病院消化器内科)
共同演者 永松 秀康(大分赤十字病院消化器内科), 福田 昌英(大分赤十字病院消化器内科), 柳井 優香(大分赤十字病院消化器内科), 占部 正喜(大分赤十字病院消化器内科), 垣迫 陽子(大分赤十字病院消化器内科), 上尾 哲也(大分赤十字病院消化器内科), 成田 竜一(大分赤十字病院消化器内科), 石田 哲也(大分赤十字病院消化器内科)
抄録 背景)Oddi括約筋の機能不全は、乳頭括約筋機能不全(Sphincter of Oddi Dysfunction, 以下SOD)と総称され、胆道痛や特発性再発性膵炎などの病態を起こしうる。2006年にRome III criteriaが発表され、診断および治療について提唱されている。しかしながらSODの診断にはしばしば乳頭括約筋圧測定( sphincter of Oddi manometry, SOM)で直接乳頭括約筋圧の高値や括約筋の頻回な収縮を証明しなければならず、実際の臨床では困難なことも多いと考えられる。今回、内視鏡的乳頭括約筋切開術(endoscopic shincterotomy, EST)により改善を認めたSODと考えられる1例を経験したので文献的考察を加え報告する。(症例)54歳、女性(既往歴)胆嚢摘出術(現病歴)平成22年より間欠的に右季肋部痛を自覚し、近医でCRP高値を指摘されていた。平成24年4月の当科初診時には、発熱、右季肋部痛とCRP 12mg/dl、ALP 373IU/lと異常高値を認め、器質的異常は指摘されないものの、潜在的胆道感染の可能性が否定できず、LVFXの投与で経過観察となった。平成25年2月に症状再燃し、精査加療目的にて入院となった。ERCでは、肝内胆管の壁不整が疑われ、肝生検まで行ったが、特異的な胆管所見は得られなかった。以上より、画像所見にて器質的異常がなく、biliary type SODの可能性を考慮し、診断的治療目的にESTを行った。その後一時的な内視鏡的胆道ドレナージを必要としたが、症状や血液検査所見は改善した。平成25年8月現在、CRP高値は残存するものの、症状再燃は認めていない。(考察及び結語)biliary type SODの診断には、SOM測定が必要になることがあるが、膵炎合併の危険性もあり、臨床現場に普及していないのが現状である。今後ESTによる診断的治療に関する検討も望まれる。本症例は臨床的に興味ある1例であり、文献的考察を加えて報告することとした。
索引用語 乳頭機能不全, 内視鏡的乳頭括約筋切開術