セッション情報 | 研修医発表(卒後2年迄) |
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タイトル | 研56:胆道閉鎖症術後の胃静脈瘤に対し、バルーン閉塞下逆行性経静脈的静脈瘤塞栓術(BRTO)を施行した一例 |
演者 | 篠原 希(宮崎大学医学部附属病院卒後臨床研修センター) |
共同演者 | 岩切 久芳(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 山田 優里(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 上原 なつみ(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 鈴木 翔(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 大園 芳範(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 坂口 舞(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 夏田 朱一郎(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 土持 舞衣(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 山路 卓巳(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 安倍 弘生(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 三池 忠(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 末田 光恵(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 山本 章二朗(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 蓮池 悟(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 永田 賢治(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野), 下田 和哉(宮崎大学医学部内科学講座消化器血液学分野) |
抄録 | 症例は18歳の男性。生後59日で胆道閉鎖症(IIIb1ν)に対し、肝門部空腸吻合術(葛西術)を他院にて施行された。2010年6月に当院小児外科に紹介となり、同年11月に当科紹介となった。翌月に施行した上部消化管内視鏡検査(以下GS)上、F3の胃弓隆部静脈瘤を認め、その後の経過観察上、胃静脈瘤は軽度の増大傾向を呈した。超音波内視鏡および腹部造影CT上、胃静脈瘤の径12mmと大きく、肝予備能はChild-Pugh:5/15 grade:Aと良好であった。これらの所見より予防的加療の適応と判断した。腹部血管造影所見上、バルーン閉塞下逆行性経静脈的静脈瘤塞栓術(以下BRTO)が可能と判断し、2013年4月に、これを施行した。加療8日後の腹部造影CT上、同静脈瘤は血栓化を認め、血流の残存は認めなかった。また加療47日後に施行したGS上、胃静脈瘤の縮小を認めた。 胆道閉鎖症に対しては、診断後早期に葛西術が施行されることにより長期生存が可能となった。しかし、術後も肝内胆管が炎症性閉塞性病変によって進行性に消失するため、同手術による根治性は乏しいとされる。Lykavierisらは葛西術後に肝移植術を受けなかった患児の自肝20年生存率は23%に過ぎず、その生存例の96.8%は肝硬変と診断され、69.8%が門脈圧亢進症症状を呈し、25.4%が20歳以降に肝不全のため死亡、もしくは肝移植が必要と判断されたと報告している。また松井らは、本邦における葛西術後の自肝20年生存率は約50%で、今後、年間50名程度は成人へのcarry-over例となると推測している。他方、Sarinらによれば胃静脈瘤は門脈圧亢進症の約20%程度に認められ、出血時には45%の致命率とされる。また、予防的加療は内視鏡的には困難であり、BRTOが有用との報告が多い。尚、検索し得た範囲内で胆道閉鎖症術後の胃静脈瘤に対するBRTOは5例の報告を認めた。胆道閉鎖症術後の長期生存例は、最終的には肝移植が必要となる可能性が高く、その経過中に肝硬変や門脈圧亢進に由来する種々の合併症が出現するため、小児外科医・消化器内科医・移植外科医の密な連携が必要と考えられた。 |
索引用語 | 胆道閉鎖症, 胃静脈瘤 |