セッション情報 ワークショップ2「消化器がんの薬物療法」

タイトル WS2-08:

中等度催吐リスクの消化器がん薬物療法に対する適切な制吐療法の検討

演者 柴田 伸弘(宮崎大学医学部附属病院 がん診療部DELIMITER宮崎大学医学部外科学講座 腫瘍機能制御外科学分野)
共同演者 日高 智徳(宮崎大学医学部附属病院 がん診療部DELIMITER宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 永井 公洋(宮崎大学医学部附属病院 がん診療部), 末田 光恵(宮崎大学医学部附属病院 がん診療部DELIMITER宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野), 千々岩 一男(宮崎大学医学部外科学講座 腫瘍機能制御外科学分野), 下田 和哉(宮崎大学医学部附属病院 がん診療部DELIMITER宮崎大学医学部内科学講座 消化器血液学分野)
抄録 【背景】各種ガイドラインにおいて中等度催吐リスクの薬物療法(MEC)に対する制吐療法は,Day1の5HT3受容体拮抗薬(5HT3RA)とDay1-3のデキサメタゾン(DEX)の併用が標準的である.
【目的】消化器がん薬物療法における当院の制吐療法の実施状況とその効果を検証する.
【対象と方法】2010年1月-2012年12月に宮崎大学医学部附属病院で中等度催吐リスクの薬物療法(MEC)を施行された胃癌,大腸癌の患者39例の初回治療時を対象とし,後方視的に検討した.薬物療法開始前をベースラインとし,開始から24時間までをAcute phase,24時間以降120時間までをDelayed phase,開始から120時間までをOverall phaseと定義した.制吐療法の効果は Complete Response(嘔吐なし,かつ救済制吐療法なし,以下CR),Total Control(悪心・嘔吐なし,かつ救済制吐療法なし,以下TC)を用いて評価した.また,食事摂取量についても評価可能な症例について比較を行なった.
【結果】経口摂取不良の3例とアプレピタントが投与された8例を除外した28例を解析した.13例(48.1%)でDay1の5HT3RAとDay1-3のDEXの投与が行なわれ(標準群),残りの15例(51.9%)ではDay2-3のDEXの投与が行なわれていなかった(非標準群).標準群/非標準群のOverall phase, Acute phase, Delayed phaseにおけるCR率は76.9%/86.7%, 100%/93.3%, 76.9%/86.7%,TC率は46.2%/66.7%, 76.9%/93.3%, 53.8%/66.7%,食事摂取量のベースライン比(標準群9例/非標準群11例)の中央値は0.962/1.00, 0.988/1.00, 0.966/1.00で,いずれも統計学的有意差を認めなかった.
【考察】当院の消化器がんMEC施行例では約半数でガイドライン準拠のDay2-3 DEXの投与が施行されていなかったが, 標準群と比較してCR率,TC率,食事摂取量に有意差を認めなかった.今回の検討ではMECにおける遅発期のDEX併用の意義は薄いと考えられた.
【結論】消化器がんMEC施行例における適切制吐療法は,5HT3RAとDEX併用の意義も含め,さらなる検討が必要である.
索引用語 制吐療法, ガイドライン