セッション情報 ワークショップ16(消化器病学会・消化器外科学会合同)

消化器癌に対する緩和医療

タイトル 消W16-4:

消化器癌末期患者の栄養状態と予後に及ぼす栄養療法の意義―特に死亡患者を対象として

演者 間崎 武郎(日本大・総合外科)
共同演者 間遠 一成(日本大・総合外科), 増田 英樹(日本大・総合外科)
抄録 【目的】食事摂取患者と禁食患者とでは、禁食患者の方が死亡率は高く食事摂取の重要性が報告されている.しかし,在院死亡した癌末期患者に関する栄養療法の報告は少ない.今回,我々は癌末期患者の栄養状態と栄養療法の効果を検討した.【方法】対象は2010年の1年間に,軽快退院した癌患者27名(生存群)と死亡退院した61名(死亡群).検討因子は,年齢・性別・BMI・在院日数・ICU在院歴・合併症(DM・肺炎・感染・心疾患)の有無・必要栄養量(投与カロリー,蛋白量と水分量)・食事摂取の有無・栄養投与ルート(PPN,TPNとEN)・NST介入の有無・血液生化学所見(TP,Alb,Hb,TC,ChE,CRP,BUN,Cr,AST,総リンパ球数).統計解析は単変量解析および一般化線形モデルを用い,(1)両群間で有意差のある因子の検討,(2)次いで,死亡群での栄養療法の生存期間(在院日数)に及ぼす因子を検討.【成績】(1)単変量解析で生存群/死亡群間に有意差の認められた因子は、平均年齢(66/72歳),合併症(肺炎・感染),BMI(21.0/19.3kg/m2),在院日数(11/28日),Alb(3.6/2.6g/dl),ChE(198/108U/L),CRP(0.19/4.20mg/dl),BUN(14.5/21.6mg/dl),Cr(0.73/0.80 mg/dl),AST (23.5/36.0U/L),総リンパ球数(23.7/10.6%)であった.一般化線形モデルを用いた解析では,死亡退院となる危険因子はAlb(3.0以上と以下で比較,Odds ratio(OR)=0.1,P=0.02),在院日数(OR=4.8,P=0.02)とCRP(OR=5.3,P=0.01)であった.(2)死亡群での栄養療法の生存期間の延長に及ぼす因子はTPN(P=0.002)であったが,食事摂取の関与も示唆された (P=0.08).【考察】生存群と死亡群を比較した場合,栄養状態の指標であるalbが3.0以上の症例では死亡退院のリスクが低下し,CRPの増加に伴いリスクが増加した.また死亡群だけに限ってみると適切なTPNと食事摂取が生存期間の延長に寄与するのではないかと考えられた.【結語】末期癌患者には栄養状態の把握と適切な栄養管理が重要である.
索引用語 終末期医療, 栄養管理