セッション情報 ワークショップ16(消化器病学会・消化器外科学会合同)

消化器癌に対する緩和医療

タイトル 消W16-5:

緩和ケア病棟から自宅への退院の予測因子の探索

演者 三浦 智史(国立がん研究センター東病院・緩和医療科・精神腫瘍科)
共同演者
抄録 【背景・目的】
 一般住民はがん終末期において余命半年であれば63%は在宅療養を希望し、11%は最期を自宅で迎えたいと希望するが、がん患者の在宅死亡率は8.3%(2009年)に過ぎない。本研究では、緩和ケア病棟から自宅への退院の予測因子を探索することを目的とした。
【方法】
 2010年10月1日から2011年9月30日に当院緩和ケア病棟に入院した120名の消化器がん患者について、入院診療録から情報を収集した。今回の検討においては、「ECOG-PS4の症例」、「全身状態としては退院可能だが家族の受け入れ拒否により退院できず死亡された症例」、「長期療養が必要なため他院へ転院した症例」を解析から除外した。入院患者の転帰として、退院群と在院死亡群(死亡群)に対しロジスティック回帰を実施した。BUN、脈拍、入院初日の摂取カロリー、入院経路、WBCを説明変数とした。
【結果】
 のべ135件、120名の入院があり、適格患者は69名であった。男35名/女34名、年齢平均63.0歳(範囲 30-89)。退院群23名(33.3%)、死亡群46名(66.7%)。入院期間は退院群 中央値21日(範囲5-70)/死亡群 12.5日(2-73)であった。入院時のオピオイド使用量は経口モルヒネ換算で退院群 中央値15mg(範囲0-3024)/死亡群30mg(0-670)であった。
 ロジスティック回帰では、BUN [オッズ比(OR) 23.1、95%信頼区間(CI) 2.51-597.96、p<0.01]、入院経路(OR 22.6、95%CI 3.35-273.69、p<0.001)、初日の摂取カロリー(OR 134.4、95%CI 6.71-9517.81、p<0.001)、WBC (OR 374.1、95%CI 16.04-39064.15、p<0.001)であった。
【考察】
 消化器がん患者における緩和ケア病棟から自宅への退院の予測因子として、BUNやWBC、自宅から入院されたこと、入院時摂取カロリーが多いことなどが挙げられた。本研究には限界があるものの、外来からの緩和医療科の早期介入を行い症状コントロールを行うことや、摂食を保つことは緩和ケア病棟から在宅緩和ケアの移行に繋がると考えた。今後は前向き研究を行い検証する必要がある。
索引用語 退院支援, 緩和ケア病棟