セッション情報 ワークショップ16(消化器病学会・消化器外科学会合同)

消化器癌に対する緩和医療

タイトル 消W16-6:

緩和医療としての逆流防止機能付き食道ステントの治療成績

演者 隅田 頼信(北九州市立医療センター・消化器内科)
共同演者 本田 邦臣(北九州市立医療センター・消化器内科), 秋穂 裕唯(北九州市立医療センター・消化器内科)
抄録 【目的】食道・胃噴門部悪性狭窄や食道気管支瘻孔形成例の緩和的食道ステント(ES)留置術は,重篤な偶発症の予防が望まれている.近年保険承認された逆流防止機能付きESの当院採用前後での治療成績につき比較検討した.【方法】対象は1999年~2012年3月までに緩和医療目的でcovered ESを留置した食道・胃噴門部悪性狭窄91例(男/女=76/15,年齢中央値68歳).2010年3月以前の既存ES留置例を前期群(76例),2010年4月以降の逆流防止機能付きES留置例を後期群(15例)に分けて,嚥下障害スコアー,留置後生存期間,経口摂取可能期間,在宅可能期間,偶発症を遡及的に比較検討した.使用したESは前期群WallFlexTM(Boston社製),後期群Niti-STM(Century Medical社製)とFlexella-JTM(Piolax社製)である.狭窄例(前期群:後期群)は77(62:15),瘻孔例17(16:1),ESが噴門に達した症例は19(15:4),Performance Status (PS)はPS0-2が79(64:15),PS3が12(12:0). 【成績】留置成功率(前期群:後期群)は94%:100%,在宅導入率は62%:78%,留置後生存期間は105.5日:125日と2群間に差はなかった.両群とも施術後に嚥下障害スコアー(Swellow)は改善した.留置後経口摂取可能期間は72.5日:120日(p=0.01),留置後の生存期間に対する経口摂取可能期間の割合は,78.8%:96.4%(p=0.004)で後期群で良好な成績であり逆流防止効果にも優れていた(78%:100%,p=0.05).偶発症(前期群:後期群)は30.2%:13% (喀血2/0,吐血5/0,穿孔7/0,誤嚥性肺炎5/1,脱落5/1)と前期群に偶発症が多い傾向を認めた(p=0.04).前期群中のPS別の検討では留置後生存中の経口摂取可能期間の割合(PS3:PS0-2)は53.1%:84.0%(p=0.01)とPS3で不良であった.【結論】狭窄解除や瘻孔閉鎖のための逆流防止機能付きES留置術は,偶発症と逆流症状低下,生存中の経口摂取改善を期待できる.ただし,PS3以上の患者においてはQOLへ寄与する効果は低く,その適応には慎重になる必要がある.
索引用語 食道ステント, 緩和医療